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ユーロ復権シナリオ【フィスコ・コラム】

*09:00JST ユーロ復権シナリオ【フィスコ・コラム】
2026年にユーロは続伸との見方が市場に広がりつつあります。実際、来年に向け機関投資家からのマネーが流入し、最近のユーロを下支えしているもようです。ドルと円が弱含むとの思惑を受け、消去法的にユーロが選好されるシナリオは不自然ではありません。


今年のユーロ相場は堅調そのもの。対ドルでは1月に1.0177ドルまで下落した後は上昇に転じ、1.1918ドルまで17%も上値を伸ばしました。秋口以降は失速したものの、足元は1.16-1.17ドル台と底堅さが目立ちます。対円でも安値から17%超強含み、10月以降は最高値更新が相次ぎました。ポンドに対して上昇基調を維持し、相対的に強いスイスフランに対しても下げづらい値動きです。


背景には、米トランプ政権の政策不安で機関投資家はドル買いを積極的に進めにくくなっていることがあります。通商政策や財政運営への懸念が強まり、「ドル一辺倒ではリスクが大きい」との認識が広がりました。その資金の一部が欧州に流れ込み、ユーロをサポート。実際、民間ファンドや年金基金などの大口投資家が、投資先を米国中心から欧州資産へと振り向ける動きを強めていると報じられています。


欧州の国債・社債、インフラ関連の資金需要が比較的安定していることが、こうした資金を呼び込んでいると分析されます。これらの資金は短期の投機筋と異なり、相場が多少下落してもすぐには流出しにくく、結果としてユーロを買い支える役割を果たします。ドル安と円安が重なるなか、ユーロが「選ばれやすい通貨」として存在感を強めているのは、この資金フローが寄与しているのでしょう。


ただし、ユーロは名目レートで強含むものの、実力を示す実質実効為替レートではほぼ横ばいにとどまっています。かつてギリシャ危機で大きく損なわれた通貨への信認は、その後の制度補強や危機対応を経ても、完全に回復したとは言い切れません。財政規律の緩み、ドイツやフランスを中心とした政治不安、さらにはエネルギー価格の再上昇といったリスクは今もくすぶり続けています。


直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)での「タカ派的利下げ」でドルに買いが入りやすいものの、連邦準備制度理事会(FRB)議長人事を考慮すれば、目先のドル安は不可避。日銀の利上げもすでに織り込まれ、円買いは短期的でしょう。一方、ユーロ圏経済に力強い回復は見られないものの、欧州中銀(ECB)当局者は来年の利上げの可能性に言及しました。金融政策の方向性をみれば、やはりユーロ選好の可能性は増しているようです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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