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本物の「キング」【フィスコ・コラム】

*09:00JST 本物の「キング」【フィスコ・コラム】
中東紛争を背景に原油相場の高騰が続くなか、ポンドの不安定な値動きが顕著になっています。今後、インフレをにらみ引き締め的な金融政策が取られれば、英国経済の鈍化を引き起こす要因になりかねません。先日の英国王の米国訪問は、米英間の緩衝材になったでしょうか。


英中銀金融政策委員会(MPC)は4月30日、政策金利を3.75%に据え置きました。決定は8対1で、ピル理事だけが4.0%への利上げを主張しました。中東情勢によるエネルギー価格上昇がインフレを押し上げる一方、景気悪化が物価を抑える面もあると指摘。英中銀は利上げに踏み切らず、情勢を見極める姿勢です。ベイリー総裁は「受け身の据え置き」を否定し、必要なら引き締めると示唆しました。


背景にあるのは英国内でのエネルギー価格の上昇です。中東紛争を受けて原油や天然ガスが急騰。英国は家計支出に占める天然ガスの比率が高く、電気・暖房費の上昇がそのまま生活コストの増加につながります。実際、消費者物価指数(CPI)は前年比3.3%へ加速し、今後は3〜3.5%での推移、場合によっては4%台も視野に入ります。インフレは収束しつつありましたが、エネルギー要因で再び押し上げられました。


それを受け、ポンド・ドル相場は先行き不透明感を深めています。米国とイスラエルがイランに対する攻撃を仕掛けると「有事のドル買い」で急落したものの、4月以降は持ち直し、足元は中東紛争ぼっ発前の水準に切り返しています。英中銀の引き締め的な政策スタンスによりポンドは買い戻された格好ですが、今後はスタグフレーションが広がりポンドは再び圧迫される可能性もあります。


そうしたなか、チャールズ英国王が米国を訪問。ホワイトハウスや議会での発言は、歴史を引き合いに出しながら米国の民主主義や同盟の重要性を説く内容でした。とりわけ晩餐会では、英国がなければ「米国は別の言語を話していたかもしれない」といった皮肉を交え、いわば“もう一人のキング”に一撃を加えた格好。米英の「特別な関係」は悪化が指摘されて久しいものの、今回の国王の訪米で一定の修復が進んだと評価されています。


金融市場は金利やインフレに反応しますが、通貨の信認は制度や外交力の積み重ねで決まります。政治の振れ幅が大きい米国に対し、英国は王室を軸に安定したメッセージを発信。この差は、長期的には資金の逃避先になり得ます。ポンドは目先、インフレと景気減速の板挟み、スターマー政権の弱体化が不安視されますが、「国家としての統治力」と「外交の成熟度」を示した今回の一幕は、通貨の下値を支える材料となりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。





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