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ユビAI Research Memo(7):2024年3月期は前期比1.8倍の増収、大幅な利益改善

*14:37JST ユビAI Research Memo(7):2024年3月期は前期比1.8倍の増収、大幅な利益改善
■ユビキタスAI<3858>の業績動向

1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高3,478百万円(前期比79.5%増)、営業利益71百万円(前期は84百万円の損失)、経常利益87百万円(同76百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益32百万円(同148百万円の損失)と前期比約1.8倍の増収となり、営業損益も大きく改善した。2023年4月に子会社化したライトストーンの通期の売上が883百万円、同年10月に子会社化したグレープシステムの半期の売上高527百万円が増収に大きく寄与した。30年近くの業歴を持つ両社のM&Aにより技術、取引先、人材などの経営リソースを共有し、成長・事業基盤強化が大きく進んだと言えよう。同社は車載関連機器を製造する顧客への売上割合が3割を超えるが、コロナ禍やウクライナ情勢による半導体・自動車・民生機器などのサプライチェーンの混乱が軽減したことも追い風となった。営業損益も、新規の契約時一時金の増加、採算を重視した受託開発売上の増加、単価アップなどにより同社単体の利益が123百万円改善したほか、ライトストーンの利益27百万円も加わり前期を155百万円上回り黒字で着地した。のれんの償却費66百万円加味した実質的な営業利益は138百万円となり、前期を222百万円上回るほど収益力は強化された。なお、2024年2月に公表した修正計画に対して売上高は35百万円上回ったが、営業利益は78百万円下回った。グレープシステムが連結前に計上していた資産の価値が失われ、これを計画外で費用処理し、33百万円の損失を計上したことが要因であり、当期純利益は32百万円となった。

2.事業セグメント別動向
(1) SP事業
同社の主力製品であり、SP事業の中で大きなウェイトを占めるQuickBoot(QB:高速起動製品)の売上は国内外の車載機器関連、海外民生機器の顧客からのロイヤルティが中心であるが、既存顧客の一部製品生産終了によりロイヤルティが減少し前期比18.6%減の324百万円となった。データベース製品(DB)は産業機器の顧客の生産が回復しロイヤルティが増加するとともに、受託開発を伴う新規案件獲得により同46.4%増の101百万円となった。エンベデッドプラットフォーム製品(EP)は、車載機器関連、医療及び産業機器の既存顧客からの契約時一時金及び受託開発受注が好調に推移し、同23.0%増の187百万円となった。グレープシステム製品(GS)はプリンター関連製品と音声コード製品の既存・新規顧客への販売及び契約時一時金を中心に77百万円の売上を計上した。営業損益はグレープシステムを除く既往事業における契約時一時金や受託開発受注の伸びに支えられて40百万円改善し、17百万円と黒字に転換した。ホームページの充実などWEBやSNSを活用したデジタルマーケティングを強化したことで、Web経由のアクセス、引合いが増加したことも奏功したようだ。

(2) SD事業
需要が高まっている車載ECUマイコン、ソフトウェアのバグを解析する静的コード解析及びIoT機器セキュリティ検証ツール・サービスが好調に推移し、既往のSD事業の売上高は1,137百万円と前期を131百万円上回った。グレープシステムの売上105百万円も加わり、全体の売上高は前期比23.4%増の1,242百万円となった。既存顧客からのロイヤリティの上振れ、IoT機器セキュリティ検証ツール・サービスの新規顧客獲得、製品販売に関連する受託開発売上の増加などに円安による為替差益効果もあり、営業損益は前期より78百万円改善し14百万円の損失にとどまった。

(3) SS事業
既往のSS事業は受託開発が堅調に推移し、売上高(エイムの売上)は319百万円と前期を7百万円上回る微増となった。グレープシステムの売上344百万円が加わり、全体の売上高は前期比112.6%増の663百万円となった。既往事業では、エイムのデータコンテンツ「YOMI」に関する車載機器向けを中心とするライセンス使用料売上などが計上されたこともあり、営業損益が71百万円と前期を38百万円上回ったが、グレープシステムが29百万円の損失を計上したため、全体では前期を9百万円上回るにとどまった。

(4) DA事業
教育機関、政府研究機関、企業の調査部門への主力パッケージソフトウェア製品が順調に推移し、第1四半期には官庁向けの大口受注があり、売上高は883百万円と計画を63百万円上回り、営業利益も27百万円と計画を26百万円上回った。

3. 財務状況と経営指標
2024年3月期末の資産合計は911百万円増加した。2社の連結子会社化に伴い売掛金及び契約資産が414百万円、のれんが442百万円増加した。一方、買掛金・契約負債は221百万円増加し、長・短期借入金も286百万円増加した。実質無借金経営であるが、現金及び預金の水準(現金及び預金+流動資産の有価証券)は成長投資資金として留保しながら、必要運転資金として子会社化した2社の借入を維持した形だ。そのほか、人員の増加に伴い賞与引当金、退職給付に係る負債が197百万円増加した。純資産合計は当期純利益を32百万円計上したが、その他有価証券評価差額金が9百万円減少したため、23百万円減少した。自己資本比率は62.5%と前期を19.2ポイント下回った。

2024年3月期末の現金及び現金同等物は前期末比113百万円減となったが、1,401百万円と成長投資に必要な水準をキープしている。税金等調整前当期純利益128百万円に連結子会社化した2社分ののれん償却費66百万円が加わるなど営業キャッシュ・フローが171百万円の収入となったほか、ライトストーンの保有していた投資有価証券売却などにより投資キャッシュ・フローも132百万円の収入となり、現預金90百万円と合わせて子会社の短期借入金返済318百万円に充当した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)



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