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CAICAD Research Memo(4):2024年10月期上期は大幅な損益改善を実現
2024/07/12 12:44
*12:44JST CAICAD Research Memo(4):2024年10月期上期は大幅な損益改善を実現
■決算概要
1. 2024年10月期上期決算の概要
CAICA DIGITAL<2315>の2024年10月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比5.2%増の2,866百万円、営業損失が196百万円(前年同期は1,397百万円の損失)、経常損失が320百万円(同1,534百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が425百万円(同1,350百万円の損失)と増収増益により損失幅が大きく改善した。保有する暗号資産の評価切り下げなどにより上期での黒字転換には至らなかったものの、営業キャッシュ・フローはプラスに転じている。
売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が好調に推移した。一方、「金融サービス事業」については再編により前年同期を下回ったものの、想定内である。自社発行カイカコインの一部販売や自社オリジナルNFTの販売などを進捗させている。
利益面でも、「ITサービス事業」の伸びや利益率の高い案件の獲得により大幅な増益を実現した。ただ、黒字転換できなかったのは、「金融サービス事業」への先行投資は期初計画内であったものの、保有する暗号資産の評価額を切り下げたことが主因である※。
※カイカコインなど活発な市場が存在しない暗号資産について、一部を除いて評価額を備忘価格とし、評価損273百万円を売上原価に計上した。
財政状態については、投資有価証券が増加※した一方、現金及び預金の減少や保有する暗号資産の評価引き下げなどにより総資産は前期末比8.7%減の2,714百万円に縮小した。一方、自己資本についても利益剰余金の減少により同18.8%減の1,767百万円に減少したことから、自己資本比率は65.1%(前期末は73.2%)に低下した。
※フィスコ<3807>の株式取得によるもの(詳細は後述)。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) ITサービス事業
売上高(内部取引を含む)は前年同期比6.4%増の2,845百万円、セグメント利益は同130.1%増の334百万円と増収増益となった。金融機関向けのシステム開発分野が、銀行、保険向けに堅調に推移した。とりわけ保険会社向けの一次請け案件や一次ベンダーからのメガバンク案件などが伸びた。非金融向けシステム開発分野についても、顧客のIT投資意欲は依然継続しており、大手Slerなどからの受注は好調に推移している。一方、Web3ビジネスなどに関連する自社ブランド製品※については、本格的な業績貢献には至っていない。利益面でも、顧客への価格交渉や利益率の高い案件の獲得により大幅な損益改善を実現し、セグメント利益率は11.7%(前年同期は5.4%)と高水準を確保した。活動面では、AIを活用したDXソリューションを保有するHCL Software(印)にパートナー認定されたほか、独自の開発プラットフォームを提供するPegasystems(米)とのパートナーシップを締結し、コンサルティングからソリューション導入、運用保守までをワンストップで提供する体制を構築した。さらには収益性の高い上流工程の獲得に向けて、アジャイル型のスクラム体制を構築し、顧客ニーズにマッチした品質の高いシステム開発を短期間で提供できる体制づくりに取り組んだ。その結果、幅広い業種からDXコンサルティングによるSIサービス及びシステム開発への引き合いが増加しているようだ。
※自社ブランド製品については、エンドユーザーのセキュリティリテラシーを向上させるサービス(CAICA Security Training/標的型メール訓練サービス)や、Web3事業に参入する企業を支援するサービス(セミオーダー型NFTマーケットプレイス開発サービス及びWeb3型のデータ保管サービス)などを展開している。
(2) 金融サービス事業
売上高(内部取引を含む)は24百万円(前年同期は48百万円)、セグメント損失は359百万円(同1,363百万円の損失)と損失幅が大きく改善した。抜本的な再編に取り組むなかで、暗号資産の販売のほか、NFTマーケットプレイス「Zaif INO」の運営などを通じて自社オリジナルのNFT販売及びゲーム領域以外のイラストレーターによるNFTの販売などで実績をあげたが、本格的な業績貢献の段階にはない(ただし、想定内の進捗)。一方、利益面では、前期まで重荷となっていた暗号資産交換所「Zaif」の運営コストなどがなくなったことで大幅な損益改善を実現した。ただ、将来に向けた「Zaif INO」運営事業及びカスタマーディベロップメント事業への先行投資は期初計画内であったものの、保有する暗号資産の評価切り下げ(273百万円の評価損)が想定外の利益圧迫要因となった。もっとも、あくまでも評価上のものであり、キャッシュ・フローに対する影響はないこと、本件後の暗号資産残高は66百万円に圧縮され、これ以上の評価切り下げは限定的であるところはポジティブに捉えることができる。活動面では、NFTのユーティリティ向上に向けて、カードをかざすだけで購入したNFTの確認ができるNFTカード形式での販売(詳細は後述)を開始したほか、韓国のWeb3企業であるSevenlineLabsとの事業提携(詳細は後述)により韓国ゲーム市場の開拓にも踏み切った。
2. 2024年10月期上期の総括
2024年10月期上期を総括すると、暗号資産の評価切り下げによる影響は想定外であったものの、大幅な損益改善を実現し、通期での黒字転換が見えてきたところや営業キャッシュ・フローがプラスに転じたところは評価すべきポイントと言える。また、暗号資産の評価切り下げについても、カイカコインの現在の市場流動性を勘案した結果であり、今後のWeb3ビジネスにおけるポテンシャル自体を否定するものでなく、あくまでも財務的な安全性を担保するための処理という見方が妥当である。前期末に実施した「Zaif」の譲渡を含めて、「金融サービス事業」の再編がどのように財務や損益に影響するかに注目していたが、ほぼ想定どおりに財務のスリム化や損益の改善を確認することができた。また、今後の取り組みについても、DXコンサルティングによる高単価案件の獲得やWeb3ビジネスの拡大に向けて注目すべき進展があったと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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■決算概要
1. 2024年10月期上期決算の概要
CAICA DIGITAL<2315>の2024年10月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比5.2%増の2,866百万円、営業損失が196百万円(前年同期は1,397百万円の損失)、経常損失が320百万円(同1,534百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が425百万円(同1,350百万円の損失)と増収増益により損失幅が大きく改善した。保有する暗号資産の評価切り下げなどにより上期での黒字転換には至らなかったものの、営業キャッシュ・フローはプラスに転じている。
売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が好調に推移した。一方、「金融サービス事業」については再編により前年同期を下回ったものの、想定内である。自社発行カイカコインの一部販売や自社オリジナルNFTの販売などを進捗させている。
利益面でも、「ITサービス事業」の伸びや利益率の高い案件の獲得により大幅な増益を実現した。ただ、黒字転換できなかったのは、「金融サービス事業」への先行投資は期初計画内であったものの、保有する暗号資産の評価額を切り下げたことが主因である※。
※カイカコインなど活発な市場が存在しない暗号資産について、一部を除いて評価額を備忘価格とし、評価損273百万円を売上原価に計上した。
財政状態については、投資有価証券が増加※した一方、現金及び預金の減少や保有する暗号資産の評価引き下げなどにより総資産は前期末比8.7%減の2,714百万円に縮小した。一方、自己資本についても利益剰余金の減少により同18.8%減の1,767百万円に減少したことから、自己資本比率は65.1%(前期末は73.2%)に低下した。
※フィスコ<3807>の株式取得によるもの(詳細は後述)。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) ITサービス事業
売上高(内部取引を含む)は前年同期比6.4%増の2,845百万円、セグメント利益は同130.1%増の334百万円と増収増益となった。金融機関向けのシステム開発分野が、銀行、保険向けに堅調に推移した。とりわけ保険会社向けの一次請け案件や一次ベンダーからのメガバンク案件などが伸びた。非金融向けシステム開発分野についても、顧客のIT投資意欲は依然継続しており、大手Slerなどからの受注は好調に推移している。一方、Web3ビジネスなどに関連する自社ブランド製品※については、本格的な業績貢献には至っていない。利益面でも、顧客への価格交渉や利益率の高い案件の獲得により大幅な損益改善を実現し、セグメント利益率は11.7%(前年同期は5.4%)と高水準を確保した。活動面では、AIを活用したDXソリューションを保有するHCL Software(印)にパートナー認定されたほか、独自の開発プラットフォームを提供するPegasystems(米)とのパートナーシップを締結し、コンサルティングからソリューション導入、運用保守までをワンストップで提供する体制を構築した。さらには収益性の高い上流工程の獲得に向けて、アジャイル型のスクラム体制を構築し、顧客ニーズにマッチした品質の高いシステム開発を短期間で提供できる体制づくりに取り組んだ。その結果、幅広い業種からDXコンサルティングによるSIサービス及びシステム開発への引き合いが増加しているようだ。
※自社ブランド製品については、エンドユーザーのセキュリティリテラシーを向上させるサービス(CAICA Security Training/標的型メール訓練サービス)や、Web3事業に参入する企業を支援するサービス(セミオーダー型NFTマーケットプレイス開発サービス及びWeb3型のデータ保管サービス)などを展開している。
(2) 金融サービス事業
売上高(内部取引を含む)は24百万円(前年同期は48百万円)、セグメント損失は359百万円(同1,363百万円の損失)と損失幅が大きく改善した。抜本的な再編に取り組むなかで、暗号資産の販売のほか、NFTマーケットプレイス「Zaif INO」の運営などを通じて自社オリジナルのNFT販売及びゲーム領域以外のイラストレーターによるNFTの販売などで実績をあげたが、本格的な業績貢献の段階にはない(ただし、想定内の進捗)。一方、利益面では、前期まで重荷となっていた暗号資産交換所「Zaif」の運営コストなどがなくなったことで大幅な損益改善を実現した。ただ、将来に向けた「Zaif INO」運営事業及びカスタマーディベロップメント事業への先行投資は期初計画内であったものの、保有する暗号資産の評価切り下げ(273百万円の評価損)が想定外の利益圧迫要因となった。もっとも、あくまでも評価上のものであり、キャッシュ・フローに対する影響はないこと、本件後の暗号資産残高は66百万円に圧縮され、これ以上の評価切り下げは限定的であるところはポジティブに捉えることができる。活動面では、NFTのユーティリティ向上に向けて、カードをかざすだけで購入したNFTの確認ができるNFTカード形式での販売(詳細は後述)を開始したほか、韓国のWeb3企業であるSevenlineLabsとの事業提携(詳細は後述)により韓国ゲーム市場の開拓にも踏み切った。
2. 2024年10月期上期の総括
2024年10月期上期を総括すると、暗号資産の評価切り下げによる影響は想定外であったものの、大幅な損益改善を実現し、通期での黒字転換が見えてきたところや営業キャッシュ・フローがプラスに転じたところは評価すべきポイントと言える。また、暗号資産の評価切り下げについても、カイカコインの現在の市場流動性を勘案した結果であり、今後のWeb3ビジネスにおけるポテンシャル自体を否定するものでなく、あくまでも財務的な安全性を担保するための処理という見方が妥当である。前期末に実施した「Zaif」の譲渡を含めて、「金融サービス事業」の再編がどのように財務や損益に影響するかに注目していたが、ほぼ想定どおりに財務のスリム化や損益の改善を確認することができた。また、今後の取り組みについても、DXコンサルティングによる高単価案件の獲得やWeb3ビジネスの拡大に向けて注目すべき進展があったと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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