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グリムス Research Memo(7):エネルギーコストソリューション事業が業績拡大をけん引
2024/07/29 13:27
*13:27JST グリムス Research Memo(7):エネルギーコストソリューション事業が業績拡大をけん引
■グリムス<3150>の今後の見通し
3. 成長戦略
同社グループでは、以下のような成長戦略を計画している。
(1) エネルギーコストソリューション事業
エネルギーコストソリューション事業では、事業用太陽光発電システムを販売の中心として持続的な拡大を図る。主として中小企業顧客の工場の屋根に太陽光発電システムを設置し、作った電気を工場で利用(自家消費)してもらうことで、電気を購入するよりもコストを低く抑える提案を行う。同社グループが強みを持つ中小企業をメインターゲットとすることで差別化を図り、受注の安定と高い収益性を目指していく。また、人的リソースを投入するほか、他社との提携も積極的に推進する。さらに、今後は余剰電力の有効活用のために蓄電池とのセット販売も推進する計画だ。
このようにエネルギーコストソリューション事業を推進する背景には、東日本大震災以降、電気料金の高騰が継続しており、太陽光導入による顧客の経済メリットが傾向的に拡大していることが挙げられる。同社グループでは、機器調達と工事発注の一括施工管理、独自営業に加えアライアンス先からの顧客紹介も利用した営業力、クレジット会社を活用したファイナンス提案などにより、顧客満足度の高いビジネスモデルを確立している。同社グループではアライアンス先を通じて、中小企業20万社以上とのネットワークを有し、今後も拡大を目指している。顧客紹介から成約に至ったときは、アライアンス先に成約手数料を支払うスキームだ。
中小企業に大幅な電力料金の削減を実現させる事業用太陽光発電システムが、長期的に同社グループの業績拡大をけん引する見通しだ。一方、顧客は事業用太陽光発電システムを導入することで、大幅な電気料金の削減を享受することができる。こうして、自家消費型の太陽光発電は今後大幅に拡大すると見込まれる。同社グループは中小企業をターゲットに、低圧市場で独自の成長を実現する計画だ。同社グループのように、太陽光の知見・実績が高く、中小企業への営業を得意とする企業は少ないと考えられる。日本の商慣習上、代理店制度を使うなど、大手企業がリテール営業を直接行わないことも差別化の背景である。同社グループでは、中小企業の顧客基盤を持つ企業や事業者団体等と、アライアンスを推進し顧客を増加する方針である。
エネルギーコストソリューション事業の潜在市場について、同社グループでは次のように考える。同社グループのターゲットは中小企業で主に製造業(工場等)、農畜産業(飼育の建物等)、サービス業(飲食店等)であるが、中小企業の裾野は広く、潜在需要は膨大である。主に事業者が契約する低圧電力(200V)契約は約600万件であり、ほとんどは中小事業所と推測される。屋根の形状等から約600万件の約20%が選別対象と想定し、さらにこの半分を顧客候補と想定すれば約60万件になる。同社グループの累計実績は約3,000件(2024年3月期は約1,200件)であり、顧客候補に対する市場開拓率は依然0.5%に過ぎないとされる。ここでは大手の競合が存在せず、同社グループがトップランナーと考えられるが、シェア拡大の余地は大きい。以上から、エネルギーコストソリューション事業が、長期にわたって同社グループ業績をけん引すると見られる。
(2) スマートハウスプロジェクト事業
スマートハウスプロジェクト事業については、FIT制度が期間満了した家庭では再生可能エネルギーへの需要拡大が見込まれることから、引き続き蓄電池の販売を推進するが、当面は安定的な業績推移を図る方針である。
FIT制度の期間満了により、ユーザーは太陽光発電で発電した電力をこれまでのような高い価格で売電できなくなり、自家消費のメリットが高まることから、蓄電池の需要が増加する見通しである。政府が掲げる2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)の実現に向けて、蓄電池は重要機器と位置付けられており、2024年度から2030年度にかけて国内蓄電システムの市場規模は台数ベースで158%成長する見込みとの分析もある。太陽光バブル後、廃業または事業転換する競合他社があるなか、同社グループでは大型商業施設での催事によって販売を強化する。また、ハウスメーカーのOB顧客(家を建てた後の潜在顧客)を対象にハウスメーカーの関連会社と業務提携することにより卒FIT顧客へ蓄電池を販売する。こうして残存者利益を獲得することで、長期にわたり安定した成長を目指す計画だ。
(3) 小売電気事業
小売電気事業は、容量市場の開始といった環境のなか、引き続き負荷率が低い低圧電力需要家の顧客基盤を保有することで調達価格変動リスクの低減を図るとともに、収益性を考慮した相対電源の確保、独自燃調の運用、デリバティブ取引の活用により、電力市場価格の高騰に対するリスクヘッジを徹底し、安定的な業績成長を目指す。
前期までに、低圧では3段階に亘るリスクヘッジ策を講じ、高圧は市場価格連動型契約に特化したことで、安定ストック化を可能とするビジネスモデルを確立した。逆ザヤリスクを回避して安定収益を見込めるビジネスモデルが確立できたことに加え、電源調達環境が好転していることから、2025年3月期からは契約口数の増加による成長戦略に回帰する方針で、期初の58,000口から期末には63,000口への増加を計画する。
同社グループの営業戦略では、低圧従量電灯(100V)の顧客に対しては、営業効率を高めるため低圧電力とのセット販売(法人向け)に注力しているが、一般家庭と異なり単価が比較的高い3段目従量料金(300kWh〜)を多用するため、販売単価が高いという特徴がある。低圧電力(200V)の顧客に対しては、同社グループの強みである電子ブレーカーを中心とした顧客基盤をターゲット層としており、負荷率の低い顧客に注力しているが、契約電力に比べて使用量が少ないため、市場価格が高騰しても原価が上がりにくく、1段階目のリスクヘッジになっている。さらに、2段階目のリスクヘッジとして、市場価格高騰時にその一部を顧客転嫁する仕組みである独自燃調の運用、3段階目のリスクヘッジとして、独自燃調でカバーされていない部分について相対電源で調達価格を固定化している。高圧・特別高圧の顧客に対しては、前々期に固定単価販売を停止し、市場価格連動型契約に特化する方針に切り換えており、同社グループは調達価格変動リスクを抱えない体制を構築している。
以上のとおり、同社グループでは、エネルギーコストソリューション事業の業績を大きく伸ばし、小売電気事業の安定的なストック収益源としての規模拡大との両輪によって、今後も高収益・高成長を続ける計画である。同社グループでは2020年3月期までは毎年、中期経営計画の見直しを行い、新中期経営計画を発表してきたが、2021年3月期からは新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)に伴う先行き不透明感もあって未発表である。一方で、コロナ禍において業績予想を開示しない会社も多数あったなかで、業績予想を発表し続けたことは評価できよう。ただ、会社としての経営方針を明確化し、同社グループの投資家や従業員が同社グループの将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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■グリムス<3150>の今後の見通し
3. 成長戦略
同社グループでは、以下のような成長戦略を計画している。
(1) エネルギーコストソリューション事業
エネルギーコストソリューション事業では、事業用太陽光発電システムを販売の中心として持続的な拡大を図る。主として中小企業顧客の工場の屋根に太陽光発電システムを設置し、作った電気を工場で利用(自家消費)してもらうことで、電気を購入するよりもコストを低く抑える提案を行う。同社グループが強みを持つ中小企業をメインターゲットとすることで差別化を図り、受注の安定と高い収益性を目指していく。また、人的リソースを投入するほか、他社との提携も積極的に推進する。さらに、今後は余剰電力の有効活用のために蓄電池とのセット販売も推進する計画だ。
このようにエネルギーコストソリューション事業を推進する背景には、東日本大震災以降、電気料金の高騰が継続しており、太陽光導入による顧客の経済メリットが傾向的に拡大していることが挙げられる。同社グループでは、機器調達と工事発注の一括施工管理、独自営業に加えアライアンス先からの顧客紹介も利用した営業力、クレジット会社を活用したファイナンス提案などにより、顧客満足度の高いビジネスモデルを確立している。同社グループではアライアンス先を通じて、中小企業20万社以上とのネットワークを有し、今後も拡大を目指している。顧客紹介から成約に至ったときは、アライアンス先に成約手数料を支払うスキームだ。
中小企業に大幅な電力料金の削減を実現させる事業用太陽光発電システムが、長期的に同社グループの業績拡大をけん引する見通しだ。一方、顧客は事業用太陽光発電システムを導入することで、大幅な電気料金の削減を享受することができる。こうして、自家消費型の太陽光発電は今後大幅に拡大すると見込まれる。同社グループは中小企業をターゲットに、低圧市場で独自の成長を実現する計画だ。同社グループのように、太陽光の知見・実績が高く、中小企業への営業を得意とする企業は少ないと考えられる。日本の商慣習上、代理店制度を使うなど、大手企業がリテール営業を直接行わないことも差別化の背景である。同社グループでは、中小企業の顧客基盤を持つ企業や事業者団体等と、アライアンスを推進し顧客を増加する方針である。
エネルギーコストソリューション事業の潜在市場について、同社グループでは次のように考える。同社グループのターゲットは中小企業で主に製造業(工場等)、農畜産業(飼育の建物等)、サービス業(飲食店等)であるが、中小企業の裾野は広く、潜在需要は膨大である。主に事業者が契約する低圧電力(200V)契約は約600万件であり、ほとんどは中小事業所と推測される。屋根の形状等から約600万件の約20%が選別対象と想定し、さらにこの半分を顧客候補と想定すれば約60万件になる。同社グループの累計実績は約3,000件(2024年3月期は約1,200件)であり、顧客候補に対する市場開拓率は依然0.5%に過ぎないとされる。ここでは大手の競合が存在せず、同社グループがトップランナーと考えられるが、シェア拡大の余地は大きい。以上から、エネルギーコストソリューション事業が、長期にわたって同社グループ業績をけん引すると見られる。
(2) スマートハウスプロジェクト事業
スマートハウスプロジェクト事業については、FIT制度が期間満了した家庭では再生可能エネルギーへの需要拡大が見込まれることから、引き続き蓄電池の販売を推進するが、当面は安定的な業績推移を図る方針である。
FIT制度の期間満了により、ユーザーは太陽光発電で発電した電力をこれまでのような高い価格で売電できなくなり、自家消費のメリットが高まることから、蓄電池の需要が増加する見通しである。政府が掲げる2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)の実現に向けて、蓄電池は重要機器と位置付けられており、2024年度から2030年度にかけて国内蓄電システムの市場規模は台数ベースで158%成長する見込みとの分析もある。太陽光バブル後、廃業または事業転換する競合他社があるなか、同社グループでは大型商業施設での催事によって販売を強化する。また、ハウスメーカーのOB顧客(家を建てた後の潜在顧客)を対象にハウスメーカーの関連会社と業務提携することにより卒FIT顧客へ蓄電池を販売する。こうして残存者利益を獲得することで、長期にわたり安定した成長を目指す計画だ。
(3) 小売電気事業
小売電気事業は、容量市場の開始といった環境のなか、引き続き負荷率が低い低圧電力需要家の顧客基盤を保有することで調達価格変動リスクの低減を図るとともに、収益性を考慮した相対電源の確保、独自燃調の運用、デリバティブ取引の活用により、電力市場価格の高騰に対するリスクヘッジを徹底し、安定的な業績成長を目指す。
前期までに、低圧では3段階に亘るリスクヘッジ策を講じ、高圧は市場価格連動型契約に特化したことで、安定ストック化を可能とするビジネスモデルを確立した。逆ザヤリスクを回避して安定収益を見込めるビジネスモデルが確立できたことに加え、電源調達環境が好転していることから、2025年3月期からは契約口数の増加による成長戦略に回帰する方針で、期初の58,000口から期末には63,000口への増加を計画する。
同社グループの営業戦略では、低圧従量電灯(100V)の顧客に対しては、営業効率を高めるため低圧電力とのセット販売(法人向け)に注力しているが、一般家庭と異なり単価が比較的高い3段目従量料金(300kWh〜)を多用するため、販売単価が高いという特徴がある。低圧電力(200V)の顧客に対しては、同社グループの強みである電子ブレーカーを中心とした顧客基盤をターゲット層としており、負荷率の低い顧客に注力しているが、契約電力に比べて使用量が少ないため、市場価格が高騰しても原価が上がりにくく、1段階目のリスクヘッジになっている。さらに、2段階目のリスクヘッジとして、市場価格高騰時にその一部を顧客転嫁する仕組みである独自燃調の運用、3段階目のリスクヘッジとして、独自燃調でカバーされていない部分について相対電源で調達価格を固定化している。高圧・特別高圧の顧客に対しては、前々期に固定単価販売を停止し、市場価格連動型契約に特化する方針に切り換えており、同社グループは調達価格変動リスクを抱えない体制を構築している。
以上のとおり、同社グループでは、エネルギーコストソリューション事業の業績を大きく伸ばし、小売電気事業の安定的なストック収益源としての規模拡大との両輪によって、今後も高収益・高成長を続ける計画である。同社グループでは2020年3月期までは毎年、中期経営計画の見直しを行い、新中期経営計画を発表してきたが、2021年3月期からは新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)に伴う先行き不透明感もあって未発表である。一方で、コロナ禍において業績予想を開示しない会社も多数あったなかで、業績予想を発表し続けたことは評価できよう。ただ、会社としての経営方針を明確化し、同社グループの投資家や従業員が同社グループの将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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