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マクセル Research Memo(5):目玉は「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」と全固体電池(1)

*14:35JST マクセル Research Memo(5):目玉は「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」と全固体電池(1)
■マクセル<6810>の中期経営計画

3. MEX26の成長戦略
MEX26では、既存事業を中心に新事業、営業、経営体制それぞれで戦略を展開する計画だが、目玉は「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」という成長市場で展開する事業及び全固体電池の事業化ということになろう。

(1) 既存事業の成長戦略
既存事業の基本方針として、「市場機会」「アナログコア技術活用」「収益性」の3つの視点で成長事業を選定し、リソースを再配分することでメリハリ付けを続けてきた。MEX26でも同様の視点でベース事業と「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」の注力3分野の成長11事業に区分けし、ベース事業ではローコスト運営による収益の最大化及び低収益事業の縮小・撤退を進める一方、成長事業には技術営業人財の優先配置やMEX23の2倍超となる積極投資などリソースを集中していく。以下に、注力3分野と主要事業に関する市場環境と戦略、各分野の成長事業を示す(シェアは同社調べ)。

a) モビリティ
モビリティ分野では、ADAS(Advanced Driver Assistance System)やCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)、MaaS(Mobility as a Service)などによる安全運転支援機能の拡充、自動運転化や電動化、移動手段の革新などが予測されており、関連した部品・材料などの需要が中長期的に増加していくと考えられている。なかでも、自動車を中心とした移動体の「安心・安全」が普遍的価値として求められており、同社は、自動運転やカーボンニュートラル、死亡事故ゼロなどの実現に向け、タイヤセンシング用の耐熱コイン形リチウム電池、自動運転センシング用の車載カメラ用レンズユニット、LEDヘッドランプレンズ、車載用リチウムイオン電池の材料である塗布型セパレータを成長事業と位置付けている。車載カメラ用レンズユニットは足元ではコロナ禍で顧客の技術転換が遅れたため端境期にあるが、2028年3月期以降に向けた先行開発と積極投資により事業拡大を図る方針だ。

なかでもTPMS(タイヤ空気圧監視システム)に用いられる耐熱コイン形リチウム電池は、-40℃〜+125℃の温度や2,000G(タイヤ直貼り用途は3,000G)という加速度など厳しい環境で動作することができ、トップメーカーとして20年間で累計15億個を出荷してきた。今後もTPMSで70%という世界トップシェアを維持し、MEX26の期間で2024年3月期比20%の伸びを見込んでいる。そのため、アナログコア技術の活用により安全性に対する信頼をさらに高め、TPMSモジュールの小型化需要に合わせた高付加価値製品の生産も拡大するなど差別化を推進するとともに、法制化による市場拡大への対応やティア1との先行共同開発を進めていく。また、耐熱性の高い塗布型セパレータでは、UBE<4208>との連携による知見や実績の共有、電池メーカーとしての経験値、高速で均一な塗布技術といった強みを背景に、2027年3月期には国内ティア1との取引を2024年3月期比85%拡大する方針だ。そのため、安全性に対する信頼とともに、xEV※市場の拡大に向けた経済産業省の補助金も活用した生産設備の増強、国内OEMを含めた新規採用車種の拡大、UBEとの連携強化による製品開発や販路拡大の早期実現、車載用途以外の新規需要の獲得などを推進する。

※xEV:EV(電気自動車)やハイブリッド車など電気で走る自動車の総称。


b) ICT/AI
ICT/AI分野では、様々な機器のデジタル化からクラウドサービス、SNSや言語・画像生成AIの普及拡大、これに伴う通信データ量の急増、自動車の電動化など、社会のDXを支える半導体市場は今後の拡大も予想される。同社では、半導体製造装置向け組み込みシステム、半導体の製造工程で使用される電鋳製品や半導体工程用テープを成長事業と位置付け、既存市場におけるポジションを一層強固にするとともに、海外も含めた新市場・新顧客への事業拡大を図っていく。

なかでも半導体工程用テープは、薄膜・平滑塗布技術による安定かつ高品質の製品製造力、高い初期粘着力によるウェハやパッケージの固定力と優れた剥離性、ウェハやパッケージ表面に対して汚染の少ない特殊粘着剤の設計技術といった強みを背景に、2027年3月期の半導体工程用テープの売上高を2024年3月期比30%伸ばし、市場シェアを14%から16%へと引き上げる方針だ。そのため、高付加価値製品の販売促進、アジアでの販売拡大、技術営業強化による新規半導体メーカーや半導体製造の後工程を担うメーカーへの展開加速、材料メーカーとの共同開発による基材・粘着剤の開発力を強化する。また、半導体DMS※では、主要顧客である世界シェアの高い半導体製造装置メーカーとの長期にわたる信頼関係と技術対応力による組込みシステムの開発支援・受託開発・製造における強みや、設計から生産まで一貫対応した多品種・高品質の生産技術の強みを生かし、2027年3月期売上高を2024年3月期比20%増加、半導体製造装置業界主要メーカー内でのトップシェアを維持する方針である。そのため、組込みシステムでは生産能力を増強する。

※半導体DMS(Design & Manufacturing Service):半導体製造に関するハードとソフトの並行開発によるトータルソリューション。


c) 人/社会インフラ
人/社会インフラ分野では、QOL(Quality of Life)の向上や健康寿命の引き上げ、労働生産性の向上や人手不足への対応、社会インフラの適切な更新やメンテナンス、省エネ化や再生エネルギーへの転換など、人、生活、社会の持続可能性が求められている。同社は、医療機器向け一次電池、筒形リチウム電池、建築・建材用テープ、電設工具をそうした分野での成長事業と位置付け、今後の需要拡大に合わせて事業拡大を図る。

なかでも、今後市場が大きく伸びると見込まれている医療機器向け一次電池では、耐熱コイン形リチウム電池で培った封止技術や長寿命技術、小型薄形までの幅広い製品ラインナップといった強みを背景に、医療用途の電池に求められる高い信頼性を獲得している。特にCGM※用電池において、2027年3月期売上高を2024年3月期比70%増加、シェア20%達成を目標としている。そのため、アナログコア技術により高い信頼性を確保するとともに増産体制を構築し、現行品の販売を拡大する。加えて、次期CGM向け小型タイプの開発と早期量産を図り、糖尿病患者増加に伴う世界的なCGM需要拡大を取り込んでいく。建築・建材用テープは、気密・防水部材など様々な施工環境に対応できるラインナップと各国の住環境に適用可能なカスタマイズ性という強みを背景に、2027年3月期の売上高を2024年3月期比55%伸ばし、シェアは国内で35%以上、北米で10%、東南アジアで5%を目指す。そのため、ロジスティクスの構築を完了した北米市場では大手住宅メーカー向けOEMの獲得、東南アジアでは世帯数の多いインドネシア市場に注力し、物量増加に伴う増産投資も計画している。電設工具は、小型・軽量で高出力を可能にする超高油圧技術、市場の要求に応じた多機種、汎用性の高い電池パックや充電システムへの対応、工具制御回路、全固体電池を使用したIoTセンサーなどグループシナジーを生かすとともに、交通や建設など電設以外の業種への展開も図り、2027年3月期の売上高を2024年3月期比25%伸ばし、国内シェア(1位)を57%から63%へ、海外シェア(2位)を10%から15%へと拡大する計画だ。そのため、小型・軽量工具市場への製品投入や、電設以外の市場での新規参入による水平展開、海外向けODMの拡大、電力各社との新工法の共同研究、工具の認証取得などを推進する。

※CGM(Continuous Glucose Monitoring):連続式血糖値モニタリング。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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