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マクセル Research Memo(8):2024年3月期はライフソリューション改革などにより大幅増益
2024/08/19 14:38
*14:38JST マクセル Research Memo(8):2024年3月期はライフソリューション改革などにより大幅増益
■業績動向
1. 2024年3月期の業績動向
マクセル<6810>の2024年3月期の業績は、売上高129,139百万円(前期比2.7%減)、営業利益8,083百万円(同43.4%増)、経常利益9,786百万円(同45.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,544百万円(同45.3%増)となった。期初計画に対しては、売上高で3,861百万円の未達だったものの、営業利益で583百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で2,344百万円の過達となった。
世界経済は、新型コロナウイルス感染症が収束に向かうことで景気回復が期待されたが、米国や欧州の金融引き締め策の継続、不動産不況に起因した中国経済の減速、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化といった地政学的リスクの高まりなどを背景に不安定な状況が続いた。事業環境は、自動車市場の回復や円安の進行が追い風となったものの、半導体製造装置市場の低迷や一部地域の経済停滞、電力費の高騰など概して厳しい状況であった。
このような環境下、売上面では、車載光学部品や粘着テープの販売好調、一時的収益を含めたライセンス収入の拡大、販売価格の適正化、円安(前期比10円安の145円)はプラスに作用したが、ライフソリューション改革による国内コンシューマー製品販売事業の移管に加え、民生用リチウムイオン電池の販売減、中国など世界的な電子機器需要の低迷による一次電池の不調、半導体関連の顧客の一時的な在庫調整により減収となった。地域別では、欧米が円安の影響もあり20%近い増収となり、特に欧州では車載レンズが好調に推移したが、アジア他が横ばい、コンシューマー製品販売事業の移管のあった日本が2ケタを超える減収となった。
利益面では、一次電池、二次電池、半導体関連の販売数量の減少、おおむね収束方向にあるものの一部原材料費の高騰、顧客の民事再生手続きに伴う費用(第1四半期)、ライフソリューション改革の一時費用(第3四半期)、全固体電池の開発費及び量産体制構築費用の発生などマイナス要因はあったが、車載光学部品、粘着テープ、ライセンス収入の好調、健康・理美容製品など原価低減と製品ミックス改善による収益向上、材料費高騰などに伴う販売価格の適正化、国内コンシューマー製品販売事業の移管による固定費削減、円安などのプラス要因でカバーし、営業利益は大幅増益となった。経常利益は、為替差益の計上もあって営業利益の伸びを若干上回った。期初計画との比較では、業績が苦戦した事業により売上高は未達となったが、円安の進行とライフソリューション改革の効果が想定以上だったため営業利益は過達、為替差益の発生も加わり親会社株主に帰属する当期純利益はさらに大きな過達となった。なお、設備投資の主な内容として、全固体電池で2023年4月に量産設備が完成、2023年6月には量産品の出荷を開始、また、半導体DMSでは2025年3月期での設備導入に向けて2024年3月に工場建屋が完成した。
エネルギーの苦戦を他の3事業でカバー
2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績は、エネルギーが売上高34,971百万円(前期比4.9%減)、営業利益504百万円(同78.6%減)、機能性部材料が売上高30,144百万円(同2.9%増)、営業利益1,350百万円(同56.4%増)、光学・システム全体が売上高41,369百万円(同10.4%増)、営業利益5,606百万円(同44.2%増)、ライフソリューションが売上高22,655百万円(同22.5%減)、営業利益623百万円(前期は営業損失1,473百万円)となった。
エネルギーの売上高は、一次電池が、中国を中心としたグローバル市場の需要回復遅延により電子機器向けの数量が減少したが、世界シェア7割を占めるTPMS(タイヤ空気圧監視システム)用耐熱コイン形リチウム電池などでカバーし、横ばいを維持した。二次電池は、ゲーム機向け角形リチウム電池など民生用リチウムイオン電池の販売減により減収となった。営業利益は、固定費削減が進んだ二次電池の採算は改善したが、一次電池の販売数量減による操業度低下、全固体電池の開発費及び量産体制構築費用の計上により減益幅が膨らんだ。機能性部材料の売上高は、産業用部材が工業用ゴム製品の受注回復遅延により減収となったが、粘着テープは半導体工程用を中心に受注が回復して増収となり、全体で微増収となった。営業利益は、粘着テープが高付加価値製品の増加や販売価格の適正化などにより大幅増益、半導体工程用テープが汎用タイプは厳しかったものの付加価値の高い難しい工程向けの引き合いが強く利益をけん引、産業用部材も塗布型セパレータが伸びたことで収益性が改善し、全体で大幅な増益となった。
光学・システムの売上高は、半導体関連製品が顧客の在庫調整の影響を受けて減収となったが、自動車市場の回復と搭載率の向上により車載レンズユニットなど車載光学部品が好調に推移、一時的なものも含めライセンス収入が増加し、2ケタ増収となった。営業利益は、半導体関連製品が減益となったものの、車載光学部品やライセンス収入の増益により、大幅な増益となった。ライフソリューションの売上高は、国内コンシューマー製品販売事業の移管によるコンシューマー製品や健康・理美容製品の減収を受け、大幅な減少となった。営業利益は、ライフソリューション改革に伴う一時費用を第3四半期に計上したが、シェーバーをはじめとした健康・理美容製品の収益改善や海外生産拠点の生産性向上により、大幅増益・黒字転換となった。なお、ライフソリューション改革は、競争が厳しい国内コンシューマー製品の販売事業を電響社に移管する一方、OEMなど収益性の高い法人向け販売に経営資源を集中することで収益改善を狙ったものであり、早期に成果があったと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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■業績動向
1. 2024年3月期の業績動向
マクセル<6810>の2024年3月期の業績は、売上高129,139百万円(前期比2.7%減)、営業利益8,083百万円(同43.4%増)、経常利益9,786百万円(同45.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,544百万円(同45.3%増)となった。期初計画に対しては、売上高で3,861百万円の未達だったものの、営業利益で583百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で2,344百万円の過達となった。
世界経済は、新型コロナウイルス感染症が収束に向かうことで景気回復が期待されたが、米国や欧州の金融引き締め策の継続、不動産不況に起因した中国経済の減速、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化といった地政学的リスクの高まりなどを背景に不安定な状況が続いた。事業環境は、自動車市場の回復や円安の進行が追い風となったものの、半導体製造装置市場の低迷や一部地域の経済停滞、電力費の高騰など概して厳しい状況であった。
このような環境下、売上面では、車載光学部品や粘着テープの販売好調、一時的収益を含めたライセンス収入の拡大、販売価格の適正化、円安(前期比10円安の145円)はプラスに作用したが、ライフソリューション改革による国内コンシューマー製品販売事業の移管に加え、民生用リチウムイオン電池の販売減、中国など世界的な電子機器需要の低迷による一次電池の不調、半導体関連の顧客の一時的な在庫調整により減収となった。地域別では、欧米が円安の影響もあり20%近い増収となり、特に欧州では車載レンズが好調に推移したが、アジア他が横ばい、コンシューマー製品販売事業の移管のあった日本が2ケタを超える減収となった。
利益面では、一次電池、二次電池、半導体関連の販売数量の減少、おおむね収束方向にあるものの一部原材料費の高騰、顧客の民事再生手続きに伴う費用(第1四半期)、ライフソリューション改革の一時費用(第3四半期)、全固体電池の開発費及び量産体制構築費用の発生などマイナス要因はあったが、車載光学部品、粘着テープ、ライセンス収入の好調、健康・理美容製品など原価低減と製品ミックス改善による収益向上、材料費高騰などに伴う販売価格の適正化、国内コンシューマー製品販売事業の移管による固定費削減、円安などのプラス要因でカバーし、営業利益は大幅増益となった。経常利益は、為替差益の計上もあって営業利益の伸びを若干上回った。期初計画との比較では、業績が苦戦した事業により売上高は未達となったが、円安の進行とライフソリューション改革の効果が想定以上だったため営業利益は過達、為替差益の発生も加わり親会社株主に帰属する当期純利益はさらに大きな過達となった。なお、設備投資の主な内容として、全固体電池で2023年4月に量産設備が完成、2023年6月には量産品の出荷を開始、また、半導体DMSでは2025年3月期での設備導入に向けて2024年3月に工場建屋が完成した。
エネルギーの苦戦を他の3事業でカバー
2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績は、エネルギーが売上高34,971百万円(前期比4.9%減)、営業利益504百万円(同78.6%減)、機能性部材料が売上高30,144百万円(同2.9%増)、営業利益1,350百万円(同56.4%増)、光学・システム全体が売上高41,369百万円(同10.4%増)、営業利益5,606百万円(同44.2%増)、ライフソリューションが売上高22,655百万円(同22.5%減)、営業利益623百万円(前期は営業損失1,473百万円)となった。
エネルギーの売上高は、一次電池が、中国を中心としたグローバル市場の需要回復遅延により電子機器向けの数量が減少したが、世界シェア7割を占めるTPMS(タイヤ空気圧監視システム)用耐熱コイン形リチウム電池などでカバーし、横ばいを維持した。二次電池は、ゲーム機向け角形リチウム電池など民生用リチウムイオン電池の販売減により減収となった。営業利益は、固定費削減が進んだ二次電池の採算は改善したが、一次電池の販売数量減による操業度低下、全固体電池の開発費及び量産体制構築費用の計上により減益幅が膨らんだ。機能性部材料の売上高は、産業用部材が工業用ゴム製品の受注回復遅延により減収となったが、粘着テープは半導体工程用を中心に受注が回復して増収となり、全体で微増収となった。営業利益は、粘着テープが高付加価値製品の増加や販売価格の適正化などにより大幅増益、半導体工程用テープが汎用タイプは厳しかったものの付加価値の高い難しい工程向けの引き合いが強く利益をけん引、産業用部材も塗布型セパレータが伸びたことで収益性が改善し、全体で大幅な増益となった。
光学・システムの売上高は、半導体関連製品が顧客の在庫調整の影響を受けて減収となったが、自動車市場の回復と搭載率の向上により車載レンズユニットなど車載光学部品が好調に推移、一時的なものも含めライセンス収入が増加し、2ケタ増収となった。営業利益は、半導体関連製品が減益となったものの、車載光学部品やライセンス収入の増益により、大幅な増益となった。ライフソリューションの売上高は、国内コンシューマー製品販売事業の移管によるコンシューマー製品や健康・理美容製品の減収を受け、大幅な減少となった。営業利益は、ライフソリューション改革に伴う一時費用を第3四半期に計上したが、シェーバーをはじめとした健康・理美容製品の収益改善や海外生産拠点の生産性向上により、大幅増益・黒字転換となった。なお、ライフソリューション改革は、競争が厳しい国内コンシューマー製品の販売事業を電響社に移管する一方、OEMなど収益性の高い法人向け販売に経営資源を集中することで収益改善を狙ったものであり、早期に成果があったと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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