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インテリックス Research Memo(10):「体質強化による収益拡大」「人的資本経営の推進」等に取り組む(2)

*15:10JST インテリックス Research Memo(10):「体質強化による収益拡大」「人的資本経営の推進」等に取り組む(2)
■インテリックス<8940>の今後の見通し

(3) 先行投資事業の拡充
同社は中期的な成長戦略として、競争激化が続く中古マンション市場において、快適な住まいと電気代の節約、CO2削減といった環境への貢献を実現する省エネリノベーション「エコキューブ」を業界に先駆けて投入し、差別化商品とすることでシェア拡大を図るとともに、不動産流通市場のDXを支援するFLIE事業を新たな収益源として育成することで中長期的に持続的な成長を実現する経営基盤を構築していく。

a) 「エコキューブ」の普及拡大に向けて
住宅の省エネ化についての国の制度は新築住宅で進んでおり、2023年9月に改正建築物省エネ法に基づき省エネ性能表示制度のガイドラインが公表された。2024年4月から新築住宅において省エネ性能表示が開始され、2025年4月以降は省エネ基準に適合することが義務化されることになる。省エネ性能表示とは、住宅のエネルギー消費性能や断熱性能、年間の目安光熱費などを所定のラベルを用いて表示するものとなる。

既存住宅についても検討委員会が開催されたが、同社はこれに先立って独自に省エネ性能を計算し、“見える”化した商品「エコキューブ」を販売している。同社の子会社である(株)TEI Japanが温熱計算などを行い、「省エネルギー性能レポート」として目安光熱費やCO2削減量などの性能を数値で可視化することで、省エネ性能値での住まいの比較検討を可能にした。こうした同社の取り組みが評価され、2023年12月には東京都住宅政策本部「東京リノベーションモデルハウス事業」運営事業者にも選定された。

「エコキューブ」については、2021年1月の販売開始以降、商品の定義を変えながら販売している。当初は、断熱材施工と高効率換気システムを導入した商品を「エコキューブ」として販売していたが、2023年10月からは国の新築住宅に関するガイドラインに基づき、省エネ性能を“見える”化した商品を「エコキューブ」として販売している(断熱材施工や高効率換気システムが未導入な物件でもLED照明や高効率給湯システムの導入等で省エネ化を図り、省エネルギー性能レポートで省エネ性能を可視化した商品)。さらに、2025年5月期にはさらなる技術開発により省エネリノベーションの3つの性能(断熱性能、熱交換換気性能、消費エネルギー性能)を向上するとともに、施工コストの抑制と工期短縮化を図り、ZEH※水準も視野に入れたバージョンアップ版を投入する予定である。壁断熱では新工法を取り入れ、床断熱では素材メーカーと共同開発を進めており、特許も出願中だ。また、熱交換システムについても空調機メーカーとの共同開発により新バージョンを2024年内に投入する予定となっている。

※ ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)とは、外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅。

なお、「エコキューブ」の販売比率は2024年5月期で約17%であったが、期末保有物件のうち2024年5月期第3四半期以降に仕入れた物件の83%が「エコキューブ」となっており、2025年5月期以降は「エコキューブ」が販売の大半を占めるものと予想される。また、「エコキューブ」のなかでも国の省エネ基準に適合している物件の比率は10%となっており、同比率を2025年5月期末時点で20%まで引き上げることを目標としている。省エネ基準適合物件は、快適性の向上や光熱費の削減といったメリットに加え、住宅ローン控除対象※となるため割高感も払しょくされることから、今後の需要拡大が期待される。

※ 住宅ローン控除の適用対象となる物件は、1982年以降(新耐震基準)に建築された50平方メートル以上の物件となる。

b) FLIE事業
同社の子会社となるFLIEで、売主(不動産会社)と買主が自由に安心して直接取引ができる不動産売買プラットフォーム「FLIE」を運営しているほか、オンライン・オフライン一体型の不動産DXサービス「FLIE ONE」の提供を2023年10月より開始しており、今後安定収益源として成長するものと期待される。

「FLIE」に関しては、売主直販となるため仲介手数料(取引物件価格の約3%)が無料となり、購入者は従来よりも低コストで住宅を取得できるメリットがある。中古マンションの掲載物件数は2024年5月末時点で自社及び他社物件あわせて首都圏で2千件、全国では3千件を突破するなど業界最大規模となっている(北関東・甲信エリアのみ今後開設予定)。「FLIE」を通じた販売実績も他社物件含めて月数十件ペースと徐々に増え始めており、手数料収入の増加につながっている。

「FLIE ONE」は売主・不動産仲介会社の業務効率化を支援する各種サービスを統合したものとなる。主要サービスの1つである「フリエ de 物確」は物件情報をオンライン上で管理し、物件情報確認と内見予約を24時間受付可能としたもので、売主・仲介会社双方の業務を効率化するほかコミュニケーションコストの削減にも寄与する。また、セルフ内見サービス「Smaview(スマビュー)」は、Web上でいつでも内見予約が可能で、物件探しから現地での内見まですべてを顧客のスマートフォンで完結できるサービスとなる(部屋の解錠や共用部のオートロック解錠も可能)。既に複数の大手不動産仲介会社で導入が進んでいる。

さらに「Smaview」に関してはその特徴を生かして、用途・業種の拡大が進む見通しとなっている。2024年5月にスマートロックの企画・製造・販売会社であるCANDY HOUSE JAPAN(株)と同社が資本業務提携を締結※しており、「Smaview」を改良してログが残る入退室管理システムとセットにして提供することで、セキュリティ性を高めたソリューションを提供する計画となっている。既に、マンスリーマンション大手企業への導入も決まっているようだ。マンスリーマンションでは、客が入れ替わるたびに鍵交換を行う必要があったが、「Smaview」を活用することで鍵交換が不要となりコスト削減につながるほか、セキュリティ対策も強化されるといったメリットがあり、今後の普及拡大が見込まれる。また、不動産業界以外でも物流業界や建築業界などで需要があると見ている。同社はFLIE事業で2025年5月期の収益化を目指している。

※ 同社がCANDY HOUSE JAPANの第三者割当増資を引き受け、1.3億円を出資した。CANDY HOUSE JAPANは2017年の設立で、これまで国内外で60万台超のスマートロックの出荷実績を持つ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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