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井関農 Research Memo(1):短・中期の時間軸で抜本的構造改革と成長戦略の断行へ
2024/10/17 16:01
*16:01JST 井関農 Research Memo(1):短・中期の時間軸で抜本的構造改革と成長戦略の断行へ
■要約
井関農機<6310>は、「農家を過酷な労働から解放したい」という理念の下、1926年8月に創立された愛媛県松山市に本社を置く、農業機械総合専業メーカーである。日本やアジアでは、農家、大規模農業法人などを中心に、欧州や北米では、景観整備業者、ホビー農家、一般消費者などを対象にトラクタ・乗用芝刈機などの整地用機械、コンバインなどの収穫調製用機械、田植機・野菜移植機などの栽培用機械の開発・製造・販売・アフターサービスを行っているほか、作業機・部品等の販売、OEMによる製品の販売など多岐にわたって事業を展開している。日本農業に関しては、耕耘から稲刈り、乾燥調製まですべてのフェーズにおいて製品を提供していることが特徴だ。
同社は2023年11月、短・中期の時間軸で抜本的構造改革と成長戦略を断行すべく「プロジェクトZ」を発足し、2024年2月にその施策の方向性、同年7月に具体的な取り組みを決定・公表した。今後、同プロジェクトの各種施策を実行し、企業価値のさらなる向上を図っていく。
1. 2024年12月期第2四半期の業績概要
2024年12月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比1.4%減の91,134百万円、営業利益が同19.4%減の2,210百万円、経常利益が同17.8%減の2,469百万円、親会社株主に帰属する中間純損失が644百万円(前年同期は1,939百万円の利益)となった。売上高は、3月に国内で実施した価格改定前の駆け込み需要の反動を受け、国内事業が減収を強いられたものの、引き続き欧州をけん引役に海外事業は伸長し、海外売上高は上期として過去最高を更新した。国内では、第2四半期のみでは前年同期を上回ったものの、第1四半期の落ち込みをカバーできなかった。欧州では、インフレによる購買意欲の減退など、市場環境としては芳しくなかったものの、現地のニーズを的確に捉え、仕入商品や景観整備用トラクタなどの販売を伸ばしたことが業績拡大に寄与した。利益面では、国内外でコスト増に応じた価格改定を実施したものの、主に国内を中心とした減収・減産により売上総利益が前年同期比で減少するなか、為替の影響などもあり販管費が前年同期比で増加したことが響いた。また、親会社株主に帰属する中間純利益については、プロジェクトZの構造改革に伴う減損損失を計上したことが減益要因となった。
2. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の連結業績は、売上高で前期比0.0%増の170,000百万円、営業利益で同11.3%減の2,000百万円、経常利益で同52.2%減の1,000百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で3,100百万円(前期は29百万円の利益)を見込んでいる。期初予想との比較では、プロジェクトZ実施に伴う費用を特別損失として計上する見込みのため、親会社株主に帰属する当期純損益のみ3,500百万円下方修正したものの、それ以外の売上高、各利益に関して変更はない。期末に向けては、国内市場において稲刈りが最盛期を迎える。足元では米価上昇などを受け顧客の投資マインドも上向いてきており、大型農機や需要期を迎えるコンバインなどの拡販に注力することにより、国内事業のトップラインを伸ばしていく方針だ。利益面では、国内事業に加えて、海外事業も着実に成長させることにより、上期終了時点で積み上げた利益を期末に向けて最大限維持していく。また、同社は2024年7月にプロジェクトZの具体的な取り組みを決定・公表した。企業価値のさらなる向上を目的に、期末に向けて各種施策を確実に実行していく構えだ。
3. 中期経営計画とプロジェクトZ
同社は中期経営計画で定めた「ベストソリューションの提供」「収益とガバナンス強化による企業価値向上」の2つの基本戦略の下、「選択と集中」「ビジネスモデル転換」「収益性改善」「ESG」という4つの切り口から事業活動の変革を推進してきた。2021年12月期の初年度から各種施策を実行してきたものの、主に資産効率と収益性向上を目的とした事業構造改革に対する取り組みが不十分で、売上高に左右されることなく利益を確実にあげられる事業構造への転換は道半ばである。そこで同社は2023年11月、「プロジェクトZ」を新たに発足して施策の検討を進め、2024年7月に改めて短・中期の時間軸のなかで、資産効率と収益性を向上させながら成長を加速させるための具体的な施策を公表した。「生産最適化」「開発最適化」「国内営業深化」という3つの切り口からなる聖域なき事業構造改革と国内外の重点分野へ経営資源を集中し、成長を加速させていく考えだ。これにより、2027年12月期に連結営業利益率5%以上、ROE8%以上、DOE2%以上、PBR1倍以上の実現を目指す。
■Key Points
・2024年12月期第2四半期は減収営業減益も、海外売上高は上期として過去最高を更新
・2024年12月期は最終損益のみ下方修正。それ以外の売上、各利益の見通しに変更はなし
・2024年7月に「プロジェクトZ」の具体的取り組みを公表。期末に向けても各種施策の断行に注力
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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■要約
井関農機<6310>は、「農家を過酷な労働から解放したい」という理念の下、1926年8月に創立された愛媛県松山市に本社を置く、農業機械総合専業メーカーである。日本やアジアでは、農家、大規模農業法人などを中心に、欧州や北米では、景観整備業者、ホビー農家、一般消費者などを対象にトラクタ・乗用芝刈機などの整地用機械、コンバインなどの収穫調製用機械、田植機・野菜移植機などの栽培用機械の開発・製造・販売・アフターサービスを行っているほか、作業機・部品等の販売、OEMによる製品の販売など多岐にわたって事業を展開している。日本農業に関しては、耕耘から稲刈り、乾燥調製まですべてのフェーズにおいて製品を提供していることが特徴だ。
同社は2023年11月、短・中期の時間軸で抜本的構造改革と成長戦略を断行すべく「プロジェクトZ」を発足し、2024年2月にその施策の方向性、同年7月に具体的な取り組みを決定・公表した。今後、同プロジェクトの各種施策を実行し、企業価値のさらなる向上を図っていく。
1. 2024年12月期第2四半期の業績概要
2024年12月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比1.4%減の91,134百万円、営業利益が同19.4%減の2,210百万円、経常利益が同17.8%減の2,469百万円、親会社株主に帰属する中間純損失が644百万円(前年同期は1,939百万円の利益)となった。売上高は、3月に国内で実施した価格改定前の駆け込み需要の反動を受け、国内事業が減収を強いられたものの、引き続き欧州をけん引役に海外事業は伸長し、海外売上高は上期として過去最高を更新した。国内では、第2四半期のみでは前年同期を上回ったものの、第1四半期の落ち込みをカバーできなかった。欧州では、インフレによる購買意欲の減退など、市場環境としては芳しくなかったものの、現地のニーズを的確に捉え、仕入商品や景観整備用トラクタなどの販売を伸ばしたことが業績拡大に寄与した。利益面では、国内外でコスト増に応じた価格改定を実施したものの、主に国内を中心とした減収・減産により売上総利益が前年同期比で減少するなか、為替の影響などもあり販管費が前年同期比で増加したことが響いた。また、親会社株主に帰属する中間純利益については、プロジェクトZの構造改革に伴う減損損失を計上したことが減益要因となった。
2. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の連結業績は、売上高で前期比0.0%増の170,000百万円、営業利益で同11.3%減の2,000百万円、経常利益で同52.2%減の1,000百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で3,100百万円(前期は29百万円の利益)を見込んでいる。期初予想との比較では、プロジェクトZ実施に伴う費用を特別損失として計上する見込みのため、親会社株主に帰属する当期純損益のみ3,500百万円下方修正したものの、それ以外の売上高、各利益に関して変更はない。期末に向けては、国内市場において稲刈りが最盛期を迎える。足元では米価上昇などを受け顧客の投資マインドも上向いてきており、大型農機や需要期を迎えるコンバインなどの拡販に注力することにより、国内事業のトップラインを伸ばしていく方針だ。利益面では、国内事業に加えて、海外事業も着実に成長させることにより、上期終了時点で積み上げた利益を期末に向けて最大限維持していく。また、同社は2024年7月にプロジェクトZの具体的な取り組みを決定・公表した。企業価値のさらなる向上を目的に、期末に向けて各種施策を確実に実行していく構えだ。
3. 中期経営計画とプロジェクトZ
同社は中期経営計画で定めた「ベストソリューションの提供」「収益とガバナンス強化による企業価値向上」の2つの基本戦略の下、「選択と集中」「ビジネスモデル転換」「収益性改善」「ESG」という4つの切り口から事業活動の変革を推進してきた。2021年12月期の初年度から各種施策を実行してきたものの、主に資産効率と収益性向上を目的とした事業構造改革に対する取り組みが不十分で、売上高に左右されることなく利益を確実にあげられる事業構造への転換は道半ばである。そこで同社は2023年11月、「プロジェクトZ」を新たに発足して施策の検討を進め、2024年7月に改めて短・中期の時間軸のなかで、資産効率と収益性を向上させながら成長を加速させるための具体的な施策を公表した。「生産最適化」「開発最適化」「国内営業深化」という3つの切り口からなる聖域なき事業構造改革と国内外の重点分野へ経営資源を集中し、成長を加速させていく考えだ。これにより、2027年12月期に連結営業利益率5%以上、ROE8%以上、DOE2%以上、PBR1倍以上の実現を目指す。
■Key Points
・2024年12月期第2四半期は減収営業減益も、海外売上高は上期として過去最高を更新
・2024年12月期は最終損益のみ下方修正。それ以外の売上、各利益の見通しに変更はなし
・2024年7月に「プロジェクトZ」の具体的取り組みを公表。期末に向けても各種施策の断行に注力
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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