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井関農 Research Memo(6):2024年12月期上期は減収減益も、欧州をけん引役に海外事業は過去最高売上更新
2024/10/17 16:06
*16:06JST 井関農 Research Memo(6):2024年12月期上期は減収減益も、欧州をけん引役に海外事業は過去最高売上更新
■井関農機<6310>の業績動向
1. 2024年12月期第2四半期の業績概要
2024年12月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比1.4%減の91,134百万円、営業利益が同19.4%減の2,210百万円、経常利益が同17.8%減の2,469百万円、親会社株主に帰属する中間純損失が644百万円(前年同期は1,939百万円の利益)となった。売上高は、3月に実施した価格改定前の駆け込み需要の反動を受け、国内事業が減収を強いられたものの、引き続き欧州をけん引役に海外事業は伸長し、海外売上高は上期として過去最高を更新した。国内では、第2四半期のみでは前年同期を上回ったものの、第1四半期の落ち込みをカバーできなかった。欧州では、インフレによる購買意欲の減退など、市場環境としては芳しくなかったものの、現地のニーズを的確に捉え、仕入商品や景観整備用トラクタなどの販売を伸ばしたことが業績拡大に寄与した。利益面では、国内外でコスト増に応じた価格改定を実施したものの、主に国内を中心とした減収・減産により売上総利益が前年同期比で減少するなか、為替の影響などもあり販管費が前年同期比で増加したことが響いた。また、親会社株主に帰属する中間純損益は、プロジェクトZ実施に伴う特別損失を計上したことなどを受け、最終損失となった。短期的な痛みを伴う構造改革の実行によって、一時的に特別損失を計上したものの、この改革の効果はプロジェクトZの最終年である2027年12月期に向けて段階的に顕在化し、中長期的には収益性が高まっていくことが期待される。
国内売上高については、前年同期比5.9%減の54,864百万円だった。ビジネスモデル転換の1つとして収益性の高い付帯サービスの提供に注力するなか、作業機・補修用部品・修理収入は堅調に推移した。一方で、3月に実施した価格改定前の駆け込み需要の反動を受け、農機製品は前年同期比で減収となった。BFトラクタの販売好調などにより2024年12月期第2四半期のみの実績は前年同期を上回ったものの、第1四半期の落ち込みをカバーしきれなかった。ただ、足元では米価の上昇を受けて生産農家の投資マインドが回復してくるなど、外部環境の見通しは比較的良好である。そうしたなかで、期末に向けてトップラインの伸長が期待される。また、上期においては同社が輸入販売する大型の作業機の売上が好調で、このことも付帯サービスが堅調に推移した要因となった。品目別の売上高は、トラクタなどの整地用機械が同4.6%減の12,338百万円、田植機などの栽培用機械が同13.5%減の4,429百万円、コンバインなどの収穫調製用機械が同23.0%減の4,444百万円、メンテナンス収入などの作業機・補修用部品・修理収入は同1.5%増の21,777百万円、施設工事などのその他農業関連は同8.6%減の11,873百万円だった。
海外売上高に関しては、前年同期比6.3%増の36,270百万円だった。引き続き欧州市場がけん引役となり、上期としての過去最高売上を更新した。欧州地域の売上高は同24.7%増の26,265百万円に急伸した。市場環境としては、インフレによる購買意欲の減退など良好とは言えないが、現地のニーズを的確に捉え、仕入商品や景観整備用トラクタなどの販売を伸ばしたことが業績を押し上げた。同社はこれまで、現地の販売会社であるISEKIフランス、ISEKIドイツを連結子会社化してきた。連結子会社化することによって、同社の販売戦略をより適切にローカルレベルの事業活動に落とし込めるという。市場環境が芳しくない中でも、同社の事業戦略を現地販売会社に浸透させることにより売上を伸ばした格好だ。また、同社草刈り機は欧州特有の湿気を含んだ草に強いと現地の消費者から評価されているようで、製品機能上の強みも業績拡大に寄与した。北米地域の売上高は、同15.4%減の6,302百万円だった。グローバル戦略パートナーであるAGCOとの連携を強化しながら無金利ローンの期間延長などを始め、各種販促策を実行したものの、コンパクトトラクタ市場の調整局面が想定よりも長引いたことが影響した。アジア地域の売上高は同32.0%減の3,176百万円だった。タイを始めとするアセアン地域や韓国での需要が軟調だったことが響いた。
トピックとしては、英国販売代理店であるPTC社の株式追加取得による連結子会社化を決定したことが挙げられる。2025年から連結子会社化する計画であり、ISEKIフランス、ISEKIドイツに加えて、今回、PTC社を連結子会社化することにより、欧州子会社間での事業シナジーをより一層創出していく狙いだ。具体的には、販売テリトリーの拡大や取り扱い商材の拡充、欧州域内での在庫一元管理と効率化、多様な人材の交流によるイノベーションの創出などのシナジー効果を見込んでおり、欧州地域での同社のプレゼンスをさらに高めていく。既述のとおり、2024年12月期第2四半期においては、連結子会社であるISEKIフランス、ISEKIドイツを通じて同社の事業戦略をローカルレベルの販売活動に落とし込んだことが好業績の一因となった。同社の事業戦略を反映させやすい連結子会社が欧州市場でさらに増えることにより、業績拡大スピードが加速することが期待される。
2. 財務状況と経営指標
2024年12月期第2四半期末の財務状況は、総資産が前期末比7,137百万円増の224,239百万円となった。これは主に、春当用期の販売に伴う売掛債権が10,951百万円増加した一方で、棚卸資産が1,894百万円減少したことによる。
負債合計は同6,175百万円増の149,061百万円となった。これは主に、棚卸資産の増加に伴い借入金が7,045百万円増加したことよる。純資産合計は、同962百万円増の75,177百万円となった。これは主に、その他有価証券評価差額金が1,327百万円増加したことによる。
経営指標については、流動比率と固定比率はそれぞれ117.2%、144.2%となった。自己資本比率は31.2%だった。自己資本比率に関しては前期末よりも若干低下したものの、プロジェクトZにおいて棚卸資産圧縮による資産効率向上を推進するなかで、中長期的には有利子負債も削減され、自己資本比率が上向いていくことが想定される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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■井関農機<6310>の業績動向
1. 2024年12月期第2四半期の業績概要
2024年12月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比1.4%減の91,134百万円、営業利益が同19.4%減の2,210百万円、経常利益が同17.8%減の2,469百万円、親会社株主に帰属する中間純損失が644百万円(前年同期は1,939百万円の利益)となった。売上高は、3月に実施した価格改定前の駆け込み需要の反動を受け、国内事業が減収を強いられたものの、引き続き欧州をけん引役に海外事業は伸長し、海外売上高は上期として過去最高を更新した。国内では、第2四半期のみでは前年同期を上回ったものの、第1四半期の落ち込みをカバーできなかった。欧州では、インフレによる購買意欲の減退など、市場環境としては芳しくなかったものの、現地のニーズを的確に捉え、仕入商品や景観整備用トラクタなどの販売を伸ばしたことが業績拡大に寄与した。利益面では、国内外でコスト増に応じた価格改定を実施したものの、主に国内を中心とした減収・減産により売上総利益が前年同期比で減少するなか、為替の影響などもあり販管費が前年同期比で増加したことが響いた。また、親会社株主に帰属する中間純損益は、プロジェクトZ実施に伴う特別損失を計上したことなどを受け、最終損失となった。短期的な痛みを伴う構造改革の実行によって、一時的に特別損失を計上したものの、この改革の効果はプロジェクトZの最終年である2027年12月期に向けて段階的に顕在化し、中長期的には収益性が高まっていくことが期待される。
国内売上高については、前年同期比5.9%減の54,864百万円だった。ビジネスモデル転換の1つとして収益性の高い付帯サービスの提供に注力するなか、作業機・補修用部品・修理収入は堅調に推移した。一方で、3月に実施した価格改定前の駆け込み需要の反動を受け、農機製品は前年同期比で減収となった。BFトラクタの販売好調などにより2024年12月期第2四半期のみの実績は前年同期を上回ったものの、第1四半期の落ち込みをカバーしきれなかった。ただ、足元では米価の上昇を受けて生産農家の投資マインドが回復してくるなど、外部環境の見通しは比較的良好である。そうしたなかで、期末に向けてトップラインの伸長が期待される。また、上期においては同社が輸入販売する大型の作業機の売上が好調で、このことも付帯サービスが堅調に推移した要因となった。品目別の売上高は、トラクタなどの整地用機械が同4.6%減の12,338百万円、田植機などの栽培用機械が同13.5%減の4,429百万円、コンバインなどの収穫調製用機械が同23.0%減の4,444百万円、メンテナンス収入などの作業機・補修用部品・修理収入は同1.5%増の21,777百万円、施設工事などのその他農業関連は同8.6%減の11,873百万円だった。
海外売上高に関しては、前年同期比6.3%増の36,270百万円だった。引き続き欧州市場がけん引役となり、上期としての過去最高売上を更新した。欧州地域の売上高は同24.7%増の26,265百万円に急伸した。市場環境としては、インフレによる購買意欲の減退など良好とは言えないが、現地のニーズを的確に捉え、仕入商品や景観整備用トラクタなどの販売を伸ばしたことが業績を押し上げた。同社はこれまで、現地の販売会社であるISEKIフランス、ISEKIドイツを連結子会社化してきた。連結子会社化することによって、同社の販売戦略をより適切にローカルレベルの事業活動に落とし込めるという。市場環境が芳しくない中でも、同社の事業戦略を現地販売会社に浸透させることにより売上を伸ばした格好だ。また、同社草刈り機は欧州特有の湿気を含んだ草に強いと現地の消費者から評価されているようで、製品機能上の強みも業績拡大に寄与した。北米地域の売上高は、同15.4%減の6,302百万円だった。グローバル戦略パートナーであるAGCOとの連携を強化しながら無金利ローンの期間延長などを始め、各種販促策を実行したものの、コンパクトトラクタ市場の調整局面が想定よりも長引いたことが影響した。アジア地域の売上高は同32.0%減の3,176百万円だった。タイを始めとするアセアン地域や韓国での需要が軟調だったことが響いた。
トピックとしては、英国販売代理店であるPTC社の株式追加取得による連結子会社化を決定したことが挙げられる。2025年から連結子会社化する計画であり、ISEKIフランス、ISEKIドイツに加えて、今回、PTC社を連結子会社化することにより、欧州子会社間での事業シナジーをより一層創出していく狙いだ。具体的には、販売テリトリーの拡大や取り扱い商材の拡充、欧州域内での在庫一元管理と効率化、多様な人材の交流によるイノベーションの創出などのシナジー効果を見込んでおり、欧州地域での同社のプレゼンスをさらに高めていく。既述のとおり、2024年12月期第2四半期においては、連結子会社であるISEKIフランス、ISEKIドイツを通じて同社の事業戦略をローカルレベルの販売活動に落とし込んだことが好業績の一因となった。同社の事業戦略を反映させやすい連結子会社が欧州市場でさらに増えることにより、業績拡大スピードが加速することが期待される。
2. 財務状況と経営指標
2024年12月期第2四半期末の財務状況は、総資産が前期末比7,137百万円増の224,239百万円となった。これは主に、春当用期の販売に伴う売掛債権が10,951百万円増加した一方で、棚卸資産が1,894百万円減少したことによる。
負債合計は同6,175百万円増の149,061百万円となった。これは主に、棚卸資産の増加に伴い借入金が7,045百万円増加したことよる。純資産合計は、同962百万円増の75,177百万円となった。これは主に、その他有価証券評価差額金が1,327百万円増加したことによる。
経営指標については、流動比率と固定比率はそれぞれ117.2%、144.2%となった。自己資本比率は31.2%だった。自己資本比率に関しては前期末よりも若干低下したものの、プロジェクトZにおいて棚卸資産圧縮による資産効率向上を推進するなかで、中長期的には有利子負債も削減され、自己資本比率が上向いていくことが想定される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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