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井関農 Research Memo(10):プロジェクトZ遂行で資産効率と収益性の向上を図りPBR1倍以上を目指す(3)

*16:10JST 井関農 Research Memo(10):プロジェクトZ遂行で資産効率と収益性の向上を図りPBR1倍以上を目指す(3)
■井関農機<6310>の中長期の成長戦略

2) 成長戦略
2-1) 海外市場
地域別戦略の展開と環境対応型商品の投入などを始めとする商品戦略の推進によって業績を拡大させていく。特に同社のプレゼンスもあり、収益性も高い欧州市場をけん引役に業績を拡大させていくことにより、2030年12月期までに売上高800億円、売上高年平均成長率10%、営業利益年平均成長率20%の達成を目指す。欧州市場に関しては、既にプレゼンスの高い景観整備市場においてNo.1ブランドとしての地位を確立し、2030年12月期までに売上高400億円超の達成を目指す。EVを含むプロ用商材、仕入商品、低コストモデル機などの拡充によって商品力を強化しながら、既にブランド認知度とシェアの高い既存市場のさらなる底上げを図るとともに、相対的にシェアの低い市場や未開拓の市場へも積極的に進出を図っていく。具体的には、ブランド認知度を生かしてシェアアップを狙う市場として北欧、南欧、東欧の一部エリア、北アフリカの一部エリアを定めているほか、今後の新たな進出市場として、トルコ、南アフリカ、東欧の一部エリアなどを定めている。また、販売網強化の一環として英国代理店のPTC社を株式追加取得によって連結子会社化することを決定している。2025年12月期から連結化を開始する予定であり、欧州事業の成長加速に寄与してくることが期待される。そのほかにも、新規市場への進出に関しては、現地代理店等のM&Aも有力な選択肢として積極的に模索していく方針だ。北米市場に関しては、グローバル戦略パートナーであるAGCO社のシェアアップに向けて、地域特性に応じた商品供給等を推進していく方針である。これら地域別戦略と商品戦略の推進によって、2027年12月期までに10億円程度(2023年比)の営業利益創出効果を見込んでいる。

2-2) 国内市場
成長分野である「大型」「先端」「環境」「畑作」へ経営資源を集中配分しながら販売を強化していく。加えて、全国規模でのノウハウ共有によってメンテナンスを始めとする高収益事業を拡大することにより、安定した利益確保を実現していく。そのために、井関グループの強みを増幅させながら「ヒト」「モノ」「ノウハウ」を駆使して価値ある農業ソリューションを提供していく方針だ。具体的には、ロボットトラクタや、アイガモロボ、可変施肥田植機などを始めとする大型・先端・環境・畑作に対応した商品・ソリューションの拡充を図る。同時に、大規模企画室の設置や、大型農機・畑作酪農に強い人材の育成強化などによって、大規模農業に対するニーズの高まりなどを始めとする変化する市場ニーズに迅速に対応できる体制の強化・構築に注力する。これらにより、2027年12月期までの営業利益創出効果として5億円程度(2023年比)を見込んでいる。さらに、2030年までに井関製品売上高に占める大型機種の割合を50%以上に高めるほか、先端技術商品の売上高を年平均7.9%で成長させることを計画している。

3) 成長に向けたキャッシュアロケーション
上記の抜本的構造改革で収益性と資産効率を向上させながら、同時に成長戦略を推進していくことにより2024年12月期〜2027年12月期までの4年間で累計500億円、2028年12月期〜2030年12月期の3年間で累計520億円の営業キャッシュ・フローを創出する。2027年12月期までは抜本的構造改革や成長に向けた投資を行うことを受け、株主還元としてはDOE2%以上を想定しているものの、2028年12月期以降は創出したキャッシュを更なる株主還元の拡充に充当するほか、有利子負債の圧縮に振り向けていく方針だ。

4) ESG
ESGへの取り組みも引き続き強化する。同社は、国内製造所の生産活動から排出されるCO2を2030年までに2013年度比で26%削減すること(2019年削減率は目標9%に対して実績が12%と目標を上回った)、国内売上高に占めるエコ商品比率を2030年までに50%以上に高めることを目標として設定していたが、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同したことを受けて、さらなる環境経営の推進を実施している。具体的には、同社グループ連結会社全体における生産活動から排出されるCO2を2030年までに2014年度比で46%削減すること、国内売上高に占めるエコ商品比率を2025年までに65%以上まで高めること、取引金額の7割を占めるサプライヤーと連携した削減目標の策定や、環境に配慮した製品の開発を推進することを計画している。CO2排出量削減目標の対象に関しては、「グローバル生産拠点」だったものを「連結会社全体」へと拡大している。これにより、ESG経営をより一層加速させた格好だ。これらの環境経営の推進に加えて、事業を通じて「農業の強靭化を応援」「住みよい村や街の景観整備」「循環型社会を目指す環境保全」という3つの面からSDGsの実現に貢献する考えだ。

また社内活動においても、ワークライフバランスの充実やダイバーシティの確保などにより従業員のエンゲージメントを高めることを目標としている。

ESG投資は近年、頻発する自然災害、サプライチェーンにおける人権問題などを受け、機関投資家や個人投資家の間で急速に広まっている。こうしたなか、ESGを考慮しない企業活動を行っている企業は今後資金を調達することがますます難しくなると弊社は予想する。そういった意味でESGを念頭に事業活動を行っていくことは重要であると言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)



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