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クリアル Research Memo(6):財務健全性はクラウドファンディング特有の影響を除いた貸借対照表を基に判断

*13:06JST クリアル Research Memo(6):財務健全性はクラウドファンディング特有の影響を除いた貸借対照表を基に判断
■業績動向

4. 財務状況と経営指標
クリアル<2998>の2025年3月期第2四半期末における資産合計は、前期末比6,666百万円増の42,415百万円となった。これは主に、現金及び預金の増加3,263百万円、販売用不動産の増加2,385百万円、販売用不動産からの振替等による有形固定資産の増加548百万円によるものである。

負債合計は、前期末比5,885百万円増の37,827百万円となった。これは主に、事業拡大によるクラウドファンディング預り金の増加450百万円及び匿名組合出資預り金の増加5,709百万円、長期借入金の増加1,237百万円、短期借入金の減少1,578百万円によるものである。純資産合計は前期末比781百万円増の4,588百万円となった。これは主に、新株予約権の行使による資本金及び資本剰余金の増加各4百万円、親会社株主に帰属する中間純利益の計上741百万円による利益剰余金の増加によるものである。

同社の財務状況の特長として、負債の部にクラウドファンディング預り金3,785百万円、匿名組合出資預り金26,993百万円を計上したが、それと均衡して資産の部に現金及び預金11,123百万円のうちクラウドファンディング関連8,938百万円、販売用不動産26,864百万円のうちクラウドファンディング関連23,193百万円を計上した。資産合計42,415百万円のうち、75.8%をクラウドファンディング関連の勘定科目が占めている。なお、匿名組合出資預り金は匿名組合出資であるため、法的に返済義務を負う性質のものではないが、貸借対照表上では負債として計上される。このため参考値ながら、クラウドファンディング特有の会計処理に関する項目を除いた実質的な自己資本比率は40%手前の水準※1と、貸借対照表に基づく自己資本比率10.6%に比べて高い状態にある。流動比率についても貸借対照表からは113.5%となるが実質的には168.7%※2となり、財務健全性については問題ない水準と弊社では捉えている。

※1 クラウドファンディング関連の主な勘定科目及び残高として、クラウドファンディング預り金、匿名組合出資預り金を資産合計から除外して算出。
※2 クラウドファンディング関連の主な勘定科目及び残高として、販売用不動産(クラウドファンディングで募集した物件のみ、23,193百万円)、現金及び預金(クラウドファンディング関連、8,938百万円)を流動資産から除外、匿名組合出資預り金とクラウドファンディング預り金を流動負債から除外して算出。

5. 業績拡大の要因
(1) CREALファンド運営
従来「CREAL」として組成するファンドは、東京都内の一棟レジデンスを対象とするものが2022年3月期では全体の75%を占めていたが、クラウドファンディング投資家の増加に対して安定的にファンドを提供する必要があることから、一棟レジデンス以外の様々なアセットタイプを拡充することで、ファンドのサイズ拡大と多様な選択肢の提供を実現した。ファンドの平均規模は1件当たり11.8億円(前年同期の2倍)となり、アセットタイプは一棟レジデンスのほか、ホテル、オフィス、商業施設、ヘルスケア不動産、物流施設と広がりを見せ、一棟レジデンスの構成比は前年同期比39.9ポイント低下の26.7%に縮小した。同社にとってはファンドサイズの拡大で1件当たりの利益額が大きく上昇し、顧客と双方にメリットのある結果となった。営業体制の拡充等により、大型ファンドを安定的に満額募集できる基盤が整ったほか、オペレーション効率化で労働生産性の向上にも効果が出ている。

(2) 投資家獲得チャネルの複線化
サービス開始当初からデジタルマーケティングやオンラインチャネルを中心に顧客獲得活動を進めてきたが、2023年1月のSBIホールディングスとの資本業務提携により、SBI証券から同社への送客やSBIマネープラザ顧客への同社サービスや物件の紹介等を行って投資家獲得を進めている。2024年3月期には投資家登録手続きを省略化するシステム対応を行ったことで、獲得顧客数は2025年3月期第2四半期末時点で累計81,549人と2023年3月期末比で約2倍に増加した。2025年3月期は投資家獲得施策として従来のオンラインチャネルだけでなく、オフラインチャネルでの活動を進めている。具体的には提携先のSBIマネープラザや(株)SBI新生銀行に同社社員が出向き、直接顧客に同社サービスを説明するほか、SBI新生銀行の職員向け説明会を開くといった活動を行っている。またSBIホールディングスとの提携を通して法人会員の引き合いが増えたことから、会員登録受付をオンライン上で完結し、顧客の要望に合わせてスタッフがサービスの説明や相談を対面で行うなど、顧客の負担軽減に向けた改善を実施した。銀行等の金融機関では不動産を投資対象とする商品は少ないうえ、同社は提携により法人顧客の潜在ニーズに手ごたえを感じていることから、引き続き注力する考えである。

(3) 海外投資家の獲得
2023年11月、シンガポールにCREAL ASIAを設立し、これまで海外投資家向けファンドアレンジメントを多く手掛けた。主に「CREAL PRO」事業のAUM(運用資産残高)拡大に寄与している。また、海外投資家は「CREAL」ファンドのエグジット売却先としても期待できる。日本国内の不動産価格は原材料や人件費の高騰で上昇傾向にあるが、一方で円安環境もあり、グローバルな視点で投資先を選別する海外投資家には、日本国内の不動産はまだまだ割安な投資対象と映るようだ。同社は、外国人顧客が好むドミトリータイプのホテルのハイグレード化や、地域のホテル運営に実績のある業者との協業により日本風情のある物件の斡旋など、海外投資家へ魅力的な物件を多数アレンジして差別化を図り、海外投資家数を増やす考えである。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)



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