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tripla Research Memo(4):宿泊施設に「マーケティングを取り戻す」戦略形成と模倣困難な価値創造

*11:04JST tripla Research Memo(4):宿泊施設に「マーケティングを取り戻す」戦略形成と模倣困難な価値創造
■tripla<5136>の事業概要

1. 宿泊施設に「マーケティングを取り戻す」ための戦略形成
あらゆるB2Cビジネスにおいて、近年はdポイント、Vポイント、楽天ポイント、PayPayなどの有力ポイント経済圏が消費者の消費行動全般にアプローチし、各種ポイント還元やクーポンの発行等で製品・サービスの提供主体以上にマーケティング機能の中心的な役割を果たしている。宿泊産業においても同様のことが言え、宿泊施設の集客はOTAに依存しており、その背景にはポイント経済圏による囲い込みがある。つまり、本来主役であるべき宿泊施設よりもポイント経済圏の存在がマーケティングの主役となっており、宿泊施設はこれまで受け身の姿勢に終始することが多かった。

同社は現場の業務改善ツールである「tripla Bot」を祖業にサービスを開始したが、自社予約サイトである「tripla Book」のローンチにより自社サイト経由の集客による収益性向上をもたらし、さらに、獲得した顧客情報を「tripla Connect」に利活用することできめ細かなダイレクトマーケティングを展開し、リピート顧客の増加をもたらした。こうした変化は宿泊産業におけるゲームチェンジをもたらす可能性を秘めている。すなわち、ポイント経済圏から宿泊施設にマーケティングを取り戻す効果である。宿泊施設がポイント経済圏からマーケティングを取り戻し、ブランド価値を訴求し、顧客と継続的な関係を築く主体へと進化することで価格競争に陥りがちであった業界構造から脱却し、サービス内容やユーザーエクスペリエンスによる差別化が可能となる。今後、こうした潮流が広がれば、宿泊産業全体の収益構造やマーケティングモデルが大きく変化するだろう。

2. 黒子に徹し、重層的なサービスを提供
同社は宿泊施設に特化したSaaS型ソリューションを提供している。いずれも、既存のOTAなどの代理店とは違い、旅行客に対してはあくまで宿泊施設が窓口となり、宿泊施設の黒子となってシステムの裏側で機能を提供するものである。

主なサービスは次のとおりである。

(1) tripla Book
同社の主力サービスである「tripla Book」は、宿泊施設の自社公式ウェブサイト向け予約エンジンであり、ユーザーフレンドリーな操作性と高いコンバージョン率を実現する設計が特徴である。SNSアカウント連携、クーポン発行、ポイント機能、Googleホテル広告連携など、多様な機能を標準装備しており、2025年4月末現在で導入施設数は3,369件に達している。また、多言語対応やベストレート保証機能を通じて、訪日外国人の予約ニーズにも的確に対応している。

これまで主流だったOTA経由の予約では、宿泊施設は15%~25%の手数料を支払わなければならず収益の圧迫要因だった。それが「tripla Book」を導入すると手数料がわずか3%程度にとどまるため宿泊施設の収益向上に大きく貢献する。また、OTA経由の宿泊客の場合、獲得できる顧客情報は氏名と電話番号程度にとどまっていたが、「tripla Book」を導入した場合、自社公式ウェブサイト経由の顧客となるため顧客情報を網羅的に取得できる点も見逃せない。宿泊施設にとっては、一度宿泊した顧客に対するアフターフォローや再宿泊の提案などのダイレクトマーケティングにもつなげられる。

(2) tripla Bot
「tripla Bot」は、宿泊施設向けのAIチャットボットであり、同社の祖業となったサービスである。日本語・英語・中国語・韓国語など複数言語に対応し、FAQ対応と予約連携を統合したユーザーエクスペリエンスを提供する。顧客からの質問に対するAI応答率は95%以上とされ、問い合わせ対応の省力化と顧客満足度の向上に資するプロダクトである。たとえば、女性客から頻出する問い合わせのなかに「カールドライヤーの設置有無」がある。従来のAIチャットボットであれば「設置していない」と回答するにとどまっていたが、「tripla Bot」であれば宿泊施設側に「カールドライヤーの設置提案」という形でフィードバックを行う。つまり、単なるチャットボットの枠を超え、頻出する問い合わせに応じて宿泊施設側にユーザーエクスペリエンス向上に資する価値提供を提案するサービスである。2025年4月末現在で、導入施設数は1,993件に上る。

(3) tripla Connect
「tripla Connect」は宿泊施設向けに特化したCRM・MAツールである。予約経路を問わず顧客情報を一元管理し、属性や予約履歴に基づいたメール・LINE配信を自動化することで、最適なタイミングでのコミュニケーションを実現する。「tripla Book」との連携により予約情報の即時反映が可能であり、宿泊前後のクロスセル提案や口コミ促進、再訪喚起など、顧客のLTV向上を支援する。グループ施設をまたいだ分析・配信にも対応し、チェーンホテルのCRM戦略にも有効である。セールスフォースなど著名なCRMサービスとは異なり、宿泊施設に特化した機能のみを提供しているため、初期導入費用不要で安価に提供できている。顧客に対するマーケティングについては、従来はポイント経済圏のプラットフォーマーが主導し、宿泊施設側は受け身に終始していたが、「tripla Connect」によりダイレクトにマーケティングを行えるようになった。2025年4月末現在で、導入施設数は973件に上る。

(4) その他
「tripla Pay」は、現地決済と事前決済の両方に対応するキャッシュレス決済サービスであり、多通貨・多言語へ対応している。主にノーショー防止やキャンセル料徴収にも寄与するサービスである。広告運用代行サービスである「tripla Boost」は、Web広告やSNS広告を活用し、宿泊施設の直接集客を強化するソリューションである。

同社は国内のみならず、台湾、韓国、タイ、インドネシアなどアジア地域を中心に海外展開も積極的に進めており、現地パートナー企業の買収や現地法人の設立を通じてグローバル体制を整備している。

3. 模倣困難な価値創造プロセス
同社が構築してきた重層的な価値創造は、世界の有力チャネルマネージャーやOTAとの提携、宿泊に関する購買行動のビックデータの構築、運用能力、弛まぬ研究開発やグローカルニーズを把握する人材の存在等、数え上げれば枚挙にいとまがないほどに多種多様なケイパビリティの集合によって構築されてきた。そうした同社の価値創造は未来に向けて絶えず進化し、それぞれのケイパビリティが相互依存し、社会実装にまで及ぶことが想定される。そうした未来像が実現したとき、模倣困難性は極まるだろう。宿泊産業のゲームチェンジャーとして、着実に歩みを進めているところである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)



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