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スズケン:安定的なコア事業と新事業の拡大で中長期成長を目指す
2025/09/29 14:35
*14:35JST スズケン:安定的なコア事業と新事業の拡大で中長期成長を目指す
スズケン<9987>は、医薬品卸売事業をコアとしつつ、ヘルスケア製品開発、保険薬局等の地域医療介護支援、医療関連サービスなど幅広い事業を展開しており、全国に構築した物流網が強み。事業構成では、売上高の9割超を占める医薬品卸売が収益の柱であり、特にスペシャリティ医薬品(希少疾病薬や再生医療等の高額薬剤)の流通で業界を先行している。
2026年3月期第1四半期決算では、売上高5,928億円(前年同期比1.8%増)、営業利益55億円(同5.3%増)と増収増益を達成した。背景には、スペシャリティ医薬品流通の受託拡大の堅調推移が挙げられる。もっとも、4月の薬価改定に伴い価格交渉が未了であり、9割が暫定計上にとどまるなど収益の不確実性は残る。薬価交渉の進展が今後の利益確定に直結するため、第2四半期が注目点となる。一方で通期業績予想は売上高2兆4,680億円(前期比2.8%増)、営業利益336億円(同9.6%減)と増収となる一方、減益見込みを公表している。これはコロナ治療薬需要の減少を織り込んだものであるが、コロナ関連を除いたベースでは利益率を維持しており、会社計画はやや保守的とみられる。
セグメント別に見ると、医薬品卸売事業は依然として9割超の売上を占め、社会的必需性の高い事業として安定性が強い。ただし利益率は低水準であり、今後も大幅な改善は見込みにくい。他方、スペシャリティ医薬品流通は39社70品目(品目シェア50%超)と取扱実績を積み重ねており、新薬上市や外資系企業の国内参入を背景に伸長余地が大きい。
新たな収益モデルの構築に向け、発注した医薬品の納期や代替品の在庫状況をインターネット上で確認できる「納品予定お知らせサービス」や「納品予定アプリ」を提供しており、2025年6月末時点で約9.7万軒が登録するまでに拡大している。さらに、需要予測に基づいて発注をサポートする「発注提案アプリ」も導入が進み、同時点で約1.7万軒が利用している。これらは医療機関や薬局の業務負担軽減に加え、同社の生産性向上にも寄与している。
2024年問題に象徴される物流・人件費の上昇やエネルギー価格の高騰など逆風は多いものの、医薬品卸売は社会に不可欠なインフラであり、需要の底堅さは揺るがない。同社はフィー体系の見直しや自動化物流拠点の構築で収益確保を図っている。2024年には埼玉県草加市に最新ロボット技術を導入した首都圏物流センターを稼働、さらに2027年に愛知県春日井市で中部圏物流センターの建設を予定しており、効率化・BCP強化・環境対応を同時に実現する体制を整備している。
中期経営計画では、「既存事業の変革」と「新たな成長事業の準備」の両利き経営を掲げ、累計1,000億円の投資を計画。物流センターの自動化投資やデジタルサービス強化を進め、2026年3月期を最終年度に成長基盤を整備する。長期的には、2032年の創業100周年に向け「健康創造事業体」への転換を目指す。医薬品卸としての既存の取引基盤に加え、30万人以上の医療・介護従事者との新たなデジタルネットワーク(コラボポータル)を活用し、製薬企業や医療機関向けに新しい情報価値を提供することが期待される。
株主還元については、2023年11月に方針を改定し、2026年3月期までに総還元性向100%以上を掲げている。年間配当は100円を予定し、加えて上限260億円の自己株式取得の実施を公表。物流拠点への積極投資と並行して株主還元を強化している。
同社は、医薬品卸売を中核に安定した事業基盤を持ちながら、スペシャリティ医薬品流通とデジタルヘルス事業を成長ドライバーと位置付けている。薬価改定や物流コスト上昇といった短期的な逆風はあるものの、効率化投資や収益モデルの転換によって中長期的な成長が見込まれる。加えて、株主還元の強化は投資家に安心感を与えており、安定と成長の両立を期待したい。
<HM>
スズケン<9987>は、医薬品卸売事業をコアとしつつ、ヘルスケア製品開発、保険薬局等の地域医療介護支援、医療関連サービスなど幅広い事業を展開しており、全国に構築した物流網が強み。事業構成では、売上高の9割超を占める医薬品卸売が収益の柱であり、特にスペシャリティ医薬品(希少疾病薬や再生医療等の高額薬剤)の流通で業界を先行している。
2026年3月期第1四半期決算では、売上高5,928億円(前年同期比1.8%増)、営業利益55億円(同5.3%増)と増収増益を達成した。背景には、スペシャリティ医薬品流通の受託拡大の堅調推移が挙げられる。もっとも、4月の薬価改定に伴い価格交渉が未了であり、9割が暫定計上にとどまるなど収益の不確実性は残る。薬価交渉の進展が今後の利益確定に直結するため、第2四半期が注目点となる。一方で通期業績予想は売上高2兆4,680億円(前期比2.8%増)、営業利益336億円(同9.6%減)と増収となる一方、減益見込みを公表している。これはコロナ治療薬需要の減少を織り込んだものであるが、コロナ関連を除いたベースでは利益率を維持しており、会社計画はやや保守的とみられる。
セグメント別に見ると、医薬品卸売事業は依然として9割超の売上を占め、社会的必需性の高い事業として安定性が強い。ただし利益率は低水準であり、今後も大幅な改善は見込みにくい。他方、スペシャリティ医薬品流通は39社70品目(品目シェア50%超)と取扱実績を積み重ねており、新薬上市や外資系企業の国内参入を背景に伸長余地が大きい。
新たな収益モデルの構築に向け、発注した医薬品の納期や代替品の在庫状況をインターネット上で確認できる「納品予定お知らせサービス」や「納品予定アプリ」を提供しており、2025年6月末時点で約9.7万軒が登録するまでに拡大している。さらに、需要予測に基づいて発注をサポートする「発注提案アプリ」も導入が進み、同時点で約1.7万軒が利用している。これらは医療機関や薬局の業務負担軽減に加え、同社の生産性向上にも寄与している。
2024年問題に象徴される物流・人件費の上昇やエネルギー価格の高騰など逆風は多いものの、医薬品卸売は社会に不可欠なインフラであり、需要の底堅さは揺るがない。同社はフィー体系の見直しや自動化物流拠点の構築で収益確保を図っている。2024年には埼玉県草加市に最新ロボット技術を導入した首都圏物流センターを稼働、さらに2027年に愛知県春日井市で中部圏物流センターの建設を予定しており、効率化・BCP強化・環境対応を同時に実現する体制を整備している。
中期経営計画では、「既存事業の変革」と「新たな成長事業の準備」の両利き経営を掲げ、累計1,000億円の投資を計画。物流センターの自動化投資やデジタルサービス強化を進め、2026年3月期を最終年度に成長基盤を整備する。長期的には、2032年の創業100周年に向け「健康創造事業体」への転換を目指す。医薬品卸としての既存の取引基盤に加え、30万人以上の医療・介護従事者との新たなデジタルネットワーク(コラボポータル)を活用し、製薬企業や医療機関向けに新しい情報価値を提供することが期待される。
株主還元については、2023年11月に方針を改定し、2026年3月期までに総還元性向100%以上を掲げている。年間配当は100円を予定し、加えて上限260億円の自己株式取得の実施を公表。物流拠点への積極投資と並行して株主還元を強化している。
同社は、医薬品卸売を中核に安定した事業基盤を持ちながら、スペシャリティ医薬品流通とデジタルヘルス事業を成長ドライバーと位置付けている。薬価改定や物流コスト上昇といった短期的な逆風はあるものの、効率化投資や収益モデルの転換によって中長期的な成長が見込まれる。加えて、株主還元の強化は投資家に安心感を与えており、安定と成長の両立を期待したい。
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