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名古屋鉄道:名駅再開発を核に成長軌道を描く中部圏の総合インフラ企業、PBR0.7倍台で推移
2025/10/01 17:49
*17:49JST 名古屋鉄道:名駅再開発を核に成長軌道を描く中部圏の総合インフラ企業、PBR0.7倍台で推移
名古屋鉄道<9048>は中部圏を基盤とする大手私鉄であり、鉄道を中心にバスやタクシーなどの交通事業、不動産賃貸・分譲・管理、運送、ホテルや観光施設などのレジャー・サービス事業、流通、航空関連サービス、情報・技術サービスなど幅広い事業を展開する総合企業グループである。鉄軌道は豊橋駅-名鉄岐阜駅の名古屋本線を中心に名古屋と愛知県下の主要都市および岐阜市を結ぶ輸送をメインに、276駅・延長444.2kmを有する路線網で年間3.6億人以上を輸送している。名鉄ブランドは中部経済圏に深く根付いており、日常の生活インフラとしての役割に加え、沿線・地域のまちづくりや観光振興にも大きな役割を果たしている。
同社の競争優位性は、まず名古屋駅を起点とする全方位的な交通ネットワークにある。他の大手私鉄が地域的に特定方向に強みを持つのに対し、名鉄は中部圏全域に放射状の路線を展開しているため、地域経済とダイレクトに連動する点が差別化の源泉となっている。またJR東海が新幹線やリニアを担うのに対し、名鉄は都市近郊の通勤・通学・観光需要を担うことで補完的役割を果たしており、両者の共存関係が安定した需要基盤を生み出している。さらに鉄道という安定的事業に不動産や観光を組み合わせることで、収益源の多角化を実現している点も大きな強みである。特に名駅再開発をはじめとする都心開発プロジェクトは、不動産収益と交通需要を同時に押し上げるシナジーが期待される。
2026年3月期第1四半期業績は、営業収益168,501百万円(前年同期比1.4%増)と増収を確保した一方で、営業利益9,275百万円(同20.5%減)で着地した。連結加入した宮城交通グループの収入寄与や鉄軌道輸送人員の増加などにより増収となった一方で、人件費や減価償却費の増加が減益の要因である。セグメント別では交通事業が堅調、レジャー・サービス事業や流通事業も底堅く推移した。ただ、運送事業で貨物取扱量の減少と統合効果の遅れが影響した。不動産事業は賃貸が堅調だったものの分譲の引渡戸数減少が利益を押し下げた。
ただ、通期見通しについては、営業収益710,000百万円(前期比2.8%増)、営業利益44,000百万円(同4.6%増)を見込む。交通事業及び運送事業を中心に増収。増収により営業増益となるものの、特殊要因の剥落により最終減益の見通しとなる。価格転嫁や拠点統廃合など運送事業の改善を下期以降のカギとしつつ、交通や観光需要の堅調さを背景に通期計画の達成は可能と見ているが、分譲不動産の販売波動や運送事業の収益化遅延、金利動向などはリスク要因となる。そのほか、設備投資計画は178,200百万円と前期比大幅増であり、名駅再開発を中心とした大型投資が本格化している。
市場環境をみると、交通需要は新型コロナ禍からの回復が進むなか、インバウンド観光需要は旺盛で、ホテルや観光施設事業も堅調に推移している。貨物輸送市場では人手不足や物量減少が業界全体の収益性を圧迫しており、統合効果を早期に顕在化できるかが焦点となる。不動産市場は金利上昇リスクを抱えながらも、名古屋駅周辺や沿線都市での再開発需要は根強く、賃貸市場は堅調に推移している。
2024-2026年度の中期経営計画では「成長基盤構築・収益力強化期」と位置づけ、2027年3月期に営業利益500億円、ROE8%程度を目標とし、2030年度には営業利益700億円、ROE8%以上を掲げている。交通事業を基盤としつつ、不動産事業を中心として成長させつつ、情報・技術サービス、航空、モビリティサービスの領域でさらなる成長を狙っていく。なかでも、リニア中央新幹線開業・名古屋駅地区再開発計画が同地域にもたらす経済波及効果を同社グループが最大限取り込むことで中長期的な成長を実現させていく。名駅再開発ビルの建設による波及効果は工事期間計約1兆2,000億円、完成後は関連消費含めて計約2800億円/年と見込まれている。短期的には名駅再開発への投資期間が続くが、稼ぐ力の強化として運送事業の早期の収益改善や不動産事業の複線化を進めている。不動産事業では、2025年に私募ファンドを組成して運用を開始するとともに、上場リートの共同スポンサーになることによりリート事業への参入を予定。そのほか、政策保有株売却やアセットファイナンスを通じて巨額投資と財務健全性を両立する経営の強靭化も図る。
株主還元については、連結配当性向30%以上を基本とし安定配当を重視する。2026年3月期は年間40円(前期比+1.5円)の配当を予定している。また機動的な自己株式取得も選択肢としており、巨額投資を進めながらも株主還元と成長投資の両立を図る姿勢を明確にしている。有利子負債は足元で増加しているが、名駅再開発の開業後には財務レバレッジを再び低下させる方針を示している。
総じて、名古屋鉄道は、中部圏に根ざした交通・不動産・サービス複合企業として、名駅再開発を中核に持続的成長を志向している。短期目線では名駅再開発への投資が進んでいくが、運送事業・不動産事業、交通需要の回復やホテル・観光の好調が下支えとなろう。中長期的には、名古屋駅地区再開発計画が持続的な成長と企業価値向上の起爆剤となるため、投資家目線では、PBR1倍割れとなるなか安定した配当を受け取りつつ、十分に再成長を待てる段階にある。地域経済と直結する事業基盤を武器に、リニア開業・名駅再開発を見据えた成長戦略が実を結ぶか注目しておきたい。
<FA>
名古屋鉄道<9048>は中部圏を基盤とする大手私鉄であり、鉄道を中心にバスやタクシーなどの交通事業、不動産賃貸・分譲・管理、運送、ホテルや観光施設などのレジャー・サービス事業、流通、航空関連サービス、情報・技術サービスなど幅広い事業を展開する総合企業グループである。鉄軌道は豊橋駅-名鉄岐阜駅の名古屋本線を中心に名古屋と愛知県下の主要都市および岐阜市を結ぶ輸送をメインに、276駅・延長444.2kmを有する路線網で年間3.6億人以上を輸送している。名鉄ブランドは中部経済圏に深く根付いており、日常の生活インフラとしての役割に加え、沿線・地域のまちづくりや観光振興にも大きな役割を果たしている。
同社の競争優位性は、まず名古屋駅を起点とする全方位的な交通ネットワークにある。他の大手私鉄が地域的に特定方向に強みを持つのに対し、名鉄は中部圏全域に放射状の路線を展開しているため、地域経済とダイレクトに連動する点が差別化の源泉となっている。またJR東海が新幹線やリニアを担うのに対し、名鉄は都市近郊の通勤・通学・観光需要を担うことで補完的役割を果たしており、両者の共存関係が安定した需要基盤を生み出している。さらに鉄道という安定的事業に不動産や観光を組み合わせることで、収益源の多角化を実現している点も大きな強みである。特に名駅再開発をはじめとする都心開発プロジェクトは、不動産収益と交通需要を同時に押し上げるシナジーが期待される。
2026年3月期第1四半期業績は、営業収益168,501百万円(前年同期比1.4%増)と増収を確保した一方で、営業利益9,275百万円(同20.5%減)で着地した。連結加入した宮城交通グループの収入寄与や鉄軌道輸送人員の増加などにより増収となった一方で、人件費や減価償却費の増加が減益の要因である。セグメント別では交通事業が堅調、レジャー・サービス事業や流通事業も底堅く推移した。ただ、運送事業で貨物取扱量の減少と統合効果の遅れが影響した。不動産事業は賃貸が堅調だったものの分譲の引渡戸数減少が利益を押し下げた。
ただ、通期見通しについては、営業収益710,000百万円(前期比2.8%増)、営業利益44,000百万円(同4.6%増)を見込む。交通事業及び運送事業を中心に増収。増収により営業増益となるものの、特殊要因の剥落により最終減益の見通しとなる。価格転嫁や拠点統廃合など運送事業の改善を下期以降のカギとしつつ、交通や観光需要の堅調さを背景に通期計画の達成は可能と見ているが、分譲不動産の販売波動や運送事業の収益化遅延、金利動向などはリスク要因となる。そのほか、設備投資計画は178,200百万円と前期比大幅増であり、名駅再開発を中心とした大型投資が本格化している。
市場環境をみると、交通需要は新型コロナ禍からの回復が進むなか、インバウンド観光需要は旺盛で、ホテルや観光施設事業も堅調に推移している。貨物輸送市場では人手不足や物量減少が業界全体の収益性を圧迫しており、統合効果を早期に顕在化できるかが焦点となる。不動産市場は金利上昇リスクを抱えながらも、名古屋駅周辺や沿線都市での再開発需要は根強く、賃貸市場は堅調に推移している。
2024-2026年度の中期経営計画では「成長基盤構築・収益力強化期」と位置づけ、2027年3月期に営業利益500億円、ROE8%程度を目標とし、2030年度には営業利益700億円、ROE8%以上を掲げている。交通事業を基盤としつつ、不動産事業を中心として成長させつつ、情報・技術サービス、航空、モビリティサービスの領域でさらなる成長を狙っていく。なかでも、リニア中央新幹線開業・名古屋駅地区再開発計画が同地域にもたらす経済波及効果を同社グループが最大限取り込むことで中長期的な成長を実現させていく。名駅再開発ビルの建設による波及効果は工事期間計約1兆2,000億円、完成後は関連消費含めて計約2800億円/年と見込まれている。短期的には名駅再開発への投資期間が続くが、稼ぐ力の強化として運送事業の早期の収益改善や不動産事業の複線化を進めている。不動産事業では、2025年に私募ファンドを組成して運用を開始するとともに、上場リートの共同スポンサーになることによりリート事業への参入を予定。そのほか、政策保有株売却やアセットファイナンスを通じて巨額投資と財務健全性を両立する経営の強靭化も図る。
株主還元については、連結配当性向30%以上を基本とし安定配当を重視する。2026年3月期は年間40円(前期比+1.5円)の配当を予定している。また機動的な自己株式取得も選択肢としており、巨額投資を進めながらも株主還元と成長投資の両立を図る姿勢を明確にしている。有利子負債は足元で増加しているが、名駅再開発の開業後には財務レバレッジを再び低下させる方針を示している。
総じて、名古屋鉄道は、中部圏に根ざした交通・不動産・サービス複合企業として、名駅再開発を中核に持続的成長を志向している。短期目線では名駅再開発への投資が進んでいくが、運送事業・不動産事業、交通需要の回復やホテル・観光の好調が下支えとなろう。中長期的には、名古屋駅地区再開発計画が持続的な成長と企業価値向上の起爆剤となるため、投資家目線では、PBR1倍割れとなるなか安定した配当を受け取りつつ、十分に再成長を待てる段階にある。地域経済と直結する事業基盤を武器に、リニア開業・名駅再開発を見据えた成長戦略が実を結ぶか注目しておきたい。
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