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東京インキ:100周年を迎えた総合色彩化学メーカー、株価急騰も未だPBR0.6倍かつ配当利回り3%超え
2025/10/06 17:52
*17:52JST 東京インキ:100周年を迎えた総合色彩化学メーカー、株価急騰も未だPBR0.6倍かつ配当利回り3%超え
東京インキ<4635>は1923年創業、2023年に100周年を迎えた総合色彩化学メーカーである。インキ事業、化成品事業、加工品事業の三本柱を持ち、国内外で12拠点を展開、顧客は約3,000社に及ぶ。印刷用インキの製造に端を発し、現在ではパッケージ用のグラビアインキ、デジタル印刷対応のインクジェットインキ、さらにはプラスチック着色剤や機能性添加剤、土木資材や農業資材まで幅広い製品群を揃える。BtoBメーカーでありながら社会インフラや暮らしを支える多様な製品を提供しており、社名から想像される以上に事業領域は広いことが特長である。
セグメントごとにわけると、インキ事業(2024年度売上高構成比34.9%)では、地球環境に配慮した高機能、高品質な印刷インキ等を提供している。主な製品として、オフセット(平版)印刷用インキ、凹版印刷の一種であるグラビア印刷用インキ、版を持たないデジタル印刷の一種であるインクジェット印刷用インクなどが挙げられる。化成品事業(同48.2%)では、さまざまな生活シーンで活用されているプラスチック部品、製品に機能を付与する各種高機能製品(希釈して使用することが一般的なマスターバッチや希釈せずに使用するコンパウンドなど)を提供。加工品事業(同16.7%)では、特徴ある加工技術を駆使した産業用途の包装資材、工業・農業資材、土木・環境資材を提供している。
同社におけるサステナブル対応製品例が高付加価値品に該当するが、インキ事業では高バイオマスオフ輪インキ・ライスインキ・機能性グラビアインキ等、化学品事業では鮮度保持剤マスターバッチ・生分解性樹脂用製品・加工助剤マスターバッチ等、加工品事業ではジオセル各工法周辺部材・水処理用資材等が該当する。
同社の強みは、100年を超える歴史に裏付けられた技術蓄積と、多角的な事業ポートフォリオにある。顔料分散技術・材料配合技術・混練技術に、成形加工技術・分析評価技術を加えた5つの基盤技術から成り立っており、顧客からも厚い信頼を獲得している。インキ祖業としては大日本インキ化学工業(DIC)<4631>、サカタインクス<4633>など大手が存在するが、東京インキは化成品や加工品といった川下領域まで手掛けている点となる。特に土木資材や環境資材を扱う加工品事業は、他のインキ専業メーカーには見られない事業領域であり、差別化要因となっている。さらに、製販一体で顧客のニーズをくみ取る共感力や提案力が評価され、重要顧客との関係構築に強みを持つ。また、サステナブル対応製品や医薬包装向け製品など高付加価値領域へのシフトを進めており、利益率の改善にもつなげている。
2026年3月期第1四半期は、売上高12,027百万円(前年同期比9.4%増)、営業利益567百万円(同3.7倍)と大幅な増益を達成した。特に、主力製品の市況回復に加えて、事業ポートフォリオの見直しに伴う高付加価値製品へのシフト、さらに適正な販売価格改定の実施等が奏功して収益性の向上に大きく寄与したようだ。インキ事業ではオフセット輪転インキの販売強化に加え、グラビアインキでは昨年度承継した医薬包装向け製品が本格寄与し、機能性インキも伸長した。化成品事業は国内の機能性包材用途や自動車用途、ASEAN地域のモビリティ向け需要が想定以上に伸長、加工品事業も高付加価値製品の比率が増加した。
合わせて業績予想の上方修正を発表しており、通期業績予想は売上高47,300百万円(従来計画46,000百万円)、営業利益1,800百万(同1,300百万円)に引き上げた。第2四半期以降もインキ事業と化成品事業を中心に堅調な需要が続くと見込む一方、下期には低収益製品の整理や生産体制の再構築による一時的な減収リスクがあるとされる。ただ、高付加価値製品比率の上昇や価格改定の浸透により、収益性改善は持続すると予想されている。
印刷市場全体ではデジタル化の進展に伴うペーパーレス化が進み、オフセットインキは縮小傾向にある。しかし、食品や医薬品パッケージ分野では高機能グラビアインキやインクジェットインキが需要を支えており、成長分野としての地位を高めつつある。化成品市場では一般的なプラスチック用途の着色需要は縮小する一方、鮮度保持やモノマテリアル対応など環境対応型製品の需要が拡大、自動車分野でも国内生産台数の回復が追い風となっている。加工品事業では、国土強靭化計画を背景とした防災・減災需要により土木資材が堅調な需要が見込まれる。
同社は中期経営計画「TOKYOink 2027」を掲げているが、同期間は2030年長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」を実現するための変革期と位置付けられている。2028年3月期に売上高48,000百万円、営業利益2,000百万円、純利益1,500百万円、ROE5.5%を目標に掲げ、2031年3月期には売上高50,000百万円、営業利益2,800百万円、純利益2,000百万円、ROE8.0%を目指している。重点施策は、各分野において汎用製品の市場縮小に対してサステナブル対応製品の伸長させるほか、生産体制の再構築、効率化・自動化の推進による高収益化を図っていく。また、新規事業探索から新事業創出も行っており、インキ事業(2030年度売上高目標構成比26.0%)、化成品事業(同44.0%)、加工品事業(同18.0%)、新規事業(同12.0%)の構成を目標としている。特に、全社的にはサステナブル対応製品売上比率50%(2024年度23.8%)を2030年に目指しており、現状24%からの大幅な引き上げを計画している。
株主還元については「配当性向40%以上またはDOE1.0%以上」を基本方針とし、2026年3月期は中間配当100円、期末配当110円の合計210円を予定し、前期から増配を実施する。2028年3月期までに配当25億円、自己株式取得5億円の総額30億円を還元する計画を掲げており、積極的な還元姿勢を明確にしている。また、政策保有株式の縮減やCCC改善、不稼働資産の売却といった資本効率向上施策も進められており、PBR0.6倍台で推移する中でまずは1倍割れの解消を目指している。資本コストは7.4-7.8%に再算定され、これを上回るROEを達成することが喫緊の課題とされる。9月25日には株式分割を発表、12月末を基準日として1株を5株に分割するようで、投資単位当たりの金額を引き下げることで、株式の流動性の向上と投資家層の更なる拡大を図ることが目的となる。
東京インキは、祖業のインキ事業に加えて化成品・加工品という独自の事業ポートフォリオを有し、川下領域に踏み込んでいる点で他社との差別化を図っている。短期的には医薬包装グラビアインキ、ASEAN需要を取り込む化成品、国土強靭化を背景とした土木資材の三本柱が業績拡大を牽引している。中期的には、低収益製品整理と高付加価値製品比率の引き上げ、サステナブル対応の拡大により収益性改善を継続し、ROEを資本コスト水準以上に引き上げることが焦点となる。暮らしを支え社会インフラに貢献する製品群を有しており、今後の成長性と株主還元姿勢を評価する投資家の注目は高まろう。
<FA>
東京インキ<4635>は1923年創業、2023年に100周年を迎えた総合色彩化学メーカーである。インキ事業、化成品事業、加工品事業の三本柱を持ち、国内外で12拠点を展開、顧客は約3,000社に及ぶ。印刷用インキの製造に端を発し、現在ではパッケージ用のグラビアインキ、デジタル印刷対応のインクジェットインキ、さらにはプラスチック着色剤や機能性添加剤、土木資材や農業資材まで幅広い製品群を揃える。BtoBメーカーでありながら社会インフラや暮らしを支える多様な製品を提供しており、社名から想像される以上に事業領域は広いことが特長である。
セグメントごとにわけると、インキ事業(2024年度売上高構成比34.9%)では、地球環境に配慮した高機能、高品質な印刷インキ等を提供している。主な製品として、オフセット(平版)印刷用インキ、凹版印刷の一種であるグラビア印刷用インキ、版を持たないデジタル印刷の一種であるインクジェット印刷用インクなどが挙げられる。化成品事業(同48.2%)では、さまざまな生活シーンで活用されているプラスチック部品、製品に機能を付与する各種高機能製品(希釈して使用することが一般的なマスターバッチや希釈せずに使用するコンパウンドなど)を提供。加工品事業(同16.7%)では、特徴ある加工技術を駆使した産業用途の包装資材、工業・農業資材、土木・環境資材を提供している。
同社におけるサステナブル対応製品例が高付加価値品に該当するが、インキ事業では高バイオマスオフ輪インキ・ライスインキ・機能性グラビアインキ等、化学品事業では鮮度保持剤マスターバッチ・生分解性樹脂用製品・加工助剤マスターバッチ等、加工品事業ではジオセル各工法周辺部材・水処理用資材等が該当する。
同社の強みは、100年を超える歴史に裏付けられた技術蓄積と、多角的な事業ポートフォリオにある。顔料分散技術・材料配合技術・混練技術に、成形加工技術・分析評価技術を加えた5つの基盤技術から成り立っており、顧客からも厚い信頼を獲得している。インキ祖業としては大日本インキ化学工業(DIC)<4631>、サカタインクス<4633>など大手が存在するが、東京インキは化成品や加工品といった川下領域まで手掛けている点となる。特に土木資材や環境資材を扱う加工品事業は、他のインキ専業メーカーには見られない事業領域であり、差別化要因となっている。さらに、製販一体で顧客のニーズをくみ取る共感力や提案力が評価され、重要顧客との関係構築に強みを持つ。また、サステナブル対応製品や医薬包装向け製品など高付加価値領域へのシフトを進めており、利益率の改善にもつなげている。
2026年3月期第1四半期は、売上高12,027百万円(前年同期比9.4%増)、営業利益567百万円(同3.7倍)と大幅な増益を達成した。特に、主力製品の市況回復に加えて、事業ポートフォリオの見直しに伴う高付加価値製品へのシフト、さらに適正な販売価格改定の実施等が奏功して収益性の向上に大きく寄与したようだ。インキ事業ではオフセット輪転インキの販売強化に加え、グラビアインキでは昨年度承継した医薬包装向け製品が本格寄与し、機能性インキも伸長した。化成品事業は国内の機能性包材用途や自動車用途、ASEAN地域のモビリティ向け需要が想定以上に伸長、加工品事業も高付加価値製品の比率が増加した。
合わせて業績予想の上方修正を発表しており、通期業績予想は売上高47,300百万円(従来計画46,000百万円)、営業利益1,800百万(同1,300百万円)に引き上げた。第2四半期以降もインキ事業と化成品事業を中心に堅調な需要が続くと見込む一方、下期には低収益製品の整理や生産体制の再構築による一時的な減収リスクがあるとされる。ただ、高付加価値製品比率の上昇や価格改定の浸透により、収益性改善は持続すると予想されている。
印刷市場全体ではデジタル化の進展に伴うペーパーレス化が進み、オフセットインキは縮小傾向にある。しかし、食品や医薬品パッケージ分野では高機能グラビアインキやインクジェットインキが需要を支えており、成長分野としての地位を高めつつある。化成品市場では一般的なプラスチック用途の着色需要は縮小する一方、鮮度保持やモノマテリアル対応など環境対応型製品の需要が拡大、自動車分野でも国内生産台数の回復が追い風となっている。加工品事業では、国土強靭化計画を背景とした防災・減災需要により土木資材が堅調な需要が見込まれる。
同社は中期経営計画「TOKYOink 2027」を掲げているが、同期間は2030年長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」を実現するための変革期と位置付けられている。2028年3月期に売上高48,000百万円、営業利益2,000百万円、純利益1,500百万円、ROE5.5%を目標に掲げ、2031年3月期には売上高50,000百万円、営業利益2,800百万円、純利益2,000百万円、ROE8.0%を目指している。重点施策は、各分野において汎用製品の市場縮小に対してサステナブル対応製品の伸長させるほか、生産体制の再構築、効率化・自動化の推進による高収益化を図っていく。また、新規事業探索から新事業創出も行っており、インキ事業(2030年度売上高目標構成比26.0%)、化成品事業(同44.0%)、加工品事業(同18.0%)、新規事業(同12.0%)の構成を目標としている。特に、全社的にはサステナブル対応製品売上比率50%(2024年度23.8%)を2030年に目指しており、現状24%からの大幅な引き上げを計画している。
株主還元については「配当性向40%以上またはDOE1.0%以上」を基本方針とし、2026年3月期は中間配当100円、期末配当110円の合計210円を予定し、前期から増配を実施する。2028年3月期までに配当25億円、自己株式取得5億円の総額30億円を還元する計画を掲げており、積極的な還元姿勢を明確にしている。また、政策保有株式の縮減やCCC改善、不稼働資産の売却といった資本効率向上施策も進められており、PBR0.6倍台で推移する中でまずは1倍割れの解消を目指している。資本コストは7.4-7.8%に再算定され、これを上回るROEを達成することが喫緊の課題とされる。9月25日には株式分割を発表、12月末を基準日として1株を5株に分割するようで、投資単位当たりの金額を引き下げることで、株式の流動性の向上と投資家層の更なる拡大を図ることが目的となる。
東京インキは、祖業のインキ事業に加えて化成品・加工品という独自の事業ポートフォリオを有し、川下領域に踏み込んでいる点で他社との差別化を図っている。短期的には医薬包装グラビアインキ、ASEAN需要を取り込む化成品、国土強靭化を背景とした土木資材の三本柱が業績拡大を牽引している。中期的には、低収益製品整理と高付加価値製品比率の引き上げ、サステナブル対応の拡大により収益性改善を継続し、ROEを資本コスト水準以上に引き上げることが焦点となる。暮らしを支え社会インフラに貢献する製品群を有しており、今後の成長性と株主還元姿勢を評価する投資家の注目は高まろう。
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