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早稲アカ Research Memo(4):AIの積極活用とLTV最大化の取り組みを推進し、持続的成長を目指す
2025/12/18 12:34
*12:34JST 早稲アカ Research Memo(4):AIの積極活用とLTV最大化の取り組みを推進し、持続的成長を目指す
■早稲田アカデミー<4718>の業績動向
3. 成長戦略
同社は少子化の進行やそれに伴う高校・大学受験の環境変化で競争激化が続くなかでも、「本来価値」と「本質価値(ワセ価値)」を両輪とした価値提供、並びにDX戦略も含めたサービス品質の向上を基本戦略として、塾生数の拡大と収益性向上に取り組み、ここ数年はこうした取り組みが奏功し順調に収益を伸ばしてきた。今後これらの戦略に加えて、AIの積極活用やLTVの最大化に向けた施策、並びに成長を支える人材の育成に注力することでさらなる成長を目指す方針だ。
a) AIの積極活用
同社はコロナ禍以降、「早稲アカDUAL」や「早稲田アカデミーOnline」などICTを活用した様々なサービスを積極的に提供したことで顧客から高い評価を獲得し、塾生数の拡大につなげてきた。2025年3月期には新たに過去の模試データを活用した成績管理システム「G-Navi」を正式リリースし、蓄積されたビッグデータを活用して進路指導や学習指導に生かしている。また、AI技術を活用して過去の通塾・学習履歴から通塾に不安を抱える塾生を早期に発見し、電話や面談などフォローアップを実施することで、退塾率の抑制につながることも確認された。
こうした成果を受け、同社では今後も積極的にAIを活用していく方針で様々なテーマを立案し、その一部を実行に移している。具体的には、過去の問い合わせ対応履歴や入塾パターンの履歴データを分析し、効果的な集客アプローチの導出に取り組んでいる。過去データから顧客属性に合わせて入塾率が高くなるようなアプローチを実施することで、塾生数の増加だけでなく塾生獲得コストの低減につながるものと期待される。また、LTV最大化に向けた取り組みにもつながるが、集団指導と個別指導の併用ニーズを集団指導での学習履歴・成績データの変化から分析し、併用することにより得られた学力向上等の効果を過去データから可視化し、塾生や保護者に提案していくことで個別指導との併用率向上につなげていく考えだ。
b) LTV最大化への取り組み
LTV最大化の施策として、主力の小中集団指導校舎でのサービス提供に加えて、個別指導(個別進学館)、大学受験部門、ICTを活用したIT授業(東進衛星予備校、東進中学NET)と3つのチャネルで事業展開し、多様な顧客ニーズに対応しているほか、幼児教育事業を展開する企業をグループ化したことで、幼児から高校生まで長期にわたりサービスをワンストップで提供する体制を構築した。入り口となる幼児教育については3校舎とまだ規模は小さいものの、小学部との連携を今後強化することで塾生数の増加につなげていく考えだ。また、サービス利用年数の拡大に向けて、小学部や中学部を卒塾した生徒に対してアプローチを行い、再びグループのサービスを利用してもらうこと、また集団指導校舎の塾生に対して苦手な教科を個別指導で強化してもらうことでLTVの最大化を目指していく。
一般的に私立中学校を志望する子どもたちのうち、集団指導校舎と個別指導を併用している生徒の比率は30%程度と言われているが、同社の場合、個別進学館を併用している比率は上記よりも低い数値に留まっている。校舎数が集団塾よりも少なく、集団指導校舎の近隣に個別進学館がないケースもあるため、残りについては競合の個別指導塾に流れていることになる。このため、今後は集団指導校舎の近隣に個別進学館を開設していくことで、他塾への流出を抑止しながら個別進学館の事業規模拡大を図る戦略だ。同社ではFC含めて100校体制の早期実現を目標にしており(2025年11月末75校)、今後FC校も含めて新規校舎の開設を積極的に進めていく考えだ。
また、IT授業となる東進衛星予備校については、塾生数の拡大を狙いとしている。従来、高校部では東大や早慶大など難関大学志望の生徒をターゲットにしていたため、早稲田アカデミー単体の塾生数は1,800人弱、売上高で9億円弱に留まっていたが、IT授業ではMARCHクラスの大学を志望する生徒も対象とするため、新たなターゲット層の取り込みが可能となる。東進衛星予備校及び東進ハイスクールは首都圏で200校を超え、生徒獲得競争が激しいものの、同社は独自の生徒獲得施策として、1学年に1万人以上いる「卒塾生」へのアプローチを進めている。当初は生徒獲得ペースがスローだったものの、足元では順調に新規獲得が進んでいるようで、今後も地道な集客活動を行いながら校舎数並びに塾生数の拡大を図る。
幼児教育についてはグループ化して1年半が経過し、「早稲田アカデミー」の低学年で利用している教材を「サン・キッズ」でも活用するなど、シナジー創出に向けた取り組みが徐々に進んでいる。既述のとおり生徒獲得にやや苦戦しているが、将来的には「早稲田アカデミー」への導線となり、LTV向上に貢献するものと期待される。
c) 人材育成・採用の取り組み強化
持続的な成長を実現していくためには質の高い人的リソースを拡充していくことが重要課題となる。特に、ここ1~2年は大卒初任給の上昇とともに新卒採用が難しくなってきており、採用強化と併せて育成強化にも注力し、従業員エンゲージメントの向上にも取り組んでいる。
具体的な取り組みとして、採用面では各種セミナーの開催と併せてアルバイト職員への説明会や卒塾生の採用など内部リクルートの強化に取り組んでいる。育成強化については、新卒・中途社員向け研修内容の充実を図り、教務力向上施策としては1・2年目講師に対する指導研修を実施しているほか、新たな取り組みとして2025年11月に教務力No.1講師を決定する授業技術コンテストを開催し、活性化につなげている。また、人事報酬制度についても新卒初任給や基本給のベースアップに加え、従業員RS制度を導入するなど従業員のモチベーションの維持向上に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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■早稲田アカデミー<4718>の業績動向
3. 成長戦略
同社は少子化の進行やそれに伴う高校・大学受験の環境変化で競争激化が続くなかでも、「本来価値」と「本質価値(ワセ価値)」を両輪とした価値提供、並びにDX戦略も含めたサービス品質の向上を基本戦略として、塾生数の拡大と収益性向上に取り組み、ここ数年はこうした取り組みが奏功し順調に収益を伸ばしてきた。今後これらの戦略に加えて、AIの積極活用やLTVの最大化に向けた施策、並びに成長を支える人材の育成に注力することでさらなる成長を目指す方針だ。
a) AIの積極活用
同社はコロナ禍以降、「早稲アカDUAL」や「早稲田アカデミーOnline」などICTを活用した様々なサービスを積極的に提供したことで顧客から高い評価を獲得し、塾生数の拡大につなげてきた。2025年3月期には新たに過去の模試データを活用した成績管理システム「G-Navi」を正式リリースし、蓄積されたビッグデータを活用して進路指導や学習指導に生かしている。また、AI技術を活用して過去の通塾・学習履歴から通塾に不安を抱える塾生を早期に発見し、電話や面談などフォローアップを実施することで、退塾率の抑制につながることも確認された。
こうした成果を受け、同社では今後も積極的にAIを活用していく方針で様々なテーマを立案し、その一部を実行に移している。具体的には、過去の問い合わせ対応履歴や入塾パターンの履歴データを分析し、効果的な集客アプローチの導出に取り組んでいる。過去データから顧客属性に合わせて入塾率が高くなるようなアプローチを実施することで、塾生数の増加だけでなく塾生獲得コストの低減につながるものと期待される。また、LTV最大化に向けた取り組みにもつながるが、集団指導と個別指導の併用ニーズを集団指導での学習履歴・成績データの変化から分析し、併用することにより得られた学力向上等の効果を過去データから可視化し、塾生や保護者に提案していくことで個別指導との併用率向上につなげていく考えだ。
b) LTV最大化への取り組み
LTV最大化の施策として、主力の小中集団指導校舎でのサービス提供に加えて、個別指導(個別進学館)、大学受験部門、ICTを活用したIT授業(東進衛星予備校、東進中学NET)と3つのチャネルで事業展開し、多様な顧客ニーズに対応しているほか、幼児教育事業を展開する企業をグループ化したことで、幼児から高校生まで長期にわたりサービスをワンストップで提供する体制を構築した。入り口となる幼児教育については3校舎とまだ規模は小さいものの、小学部との連携を今後強化することで塾生数の増加につなげていく考えだ。また、サービス利用年数の拡大に向けて、小学部や中学部を卒塾した生徒に対してアプローチを行い、再びグループのサービスを利用してもらうこと、また集団指導校舎の塾生に対して苦手な教科を個別指導で強化してもらうことでLTVの最大化を目指していく。
一般的に私立中学校を志望する子どもたちのうち、集団指導校舎と個別指導を併用している生徒の比率は30%程度と言われているが、同社の場合、個別進学館を併用している比率は上記よりも低い数値に留まっている。校舎数が集団塾よりも少なく、集団指導校舎の近隣に個別進学館がないケースもあるため、残りについては競合の個別指導塾に流れていることになる。このため、今後は集団指導校舎の近隣に個別進学館を開設していくことで、他塾への流出を抑止しながら個別進学館の事業規模拡大を図る戦略だ。同社ではFC含めて100校体制の早期実現を目標にしており(2025年11月末75校)、今後FC校も含めて新規校舎の開設を積極的に進めていく考えだ。
また、IT授業となる東進衛星予備校については、塾生数の拡大を狙いとしている。従来、高校部では東大や早慶大など難関大学志望の生徒をターゲットにしていたため、早稲田アカデミー単体の塾生数は1,800人弱、売上高で9億円弱に留まっていたが、IT授業ではMARCHクラスの大学を志望する生徒も対象とするため、新たなターゲット層の取り込みが可能となる。東進衛星予備校及び東進ハイスクールは首都圏で200校を超え、生徒獲得競争が激しいものの、同社は独自の生徒獲得施策として、1学年に1万人以上いる「卒塾生」へのアプローチを進めている。当初は生徒獲得ペースがスローだったものの、足元では順調に新規獲得が進んでいるようで、今後も地道な集客活動を行いながら校舎数並びに塾生数の拡大を図る。
幼児教育についてはグループ化して1年半が経過し、「早稲田アカデミー」の低学年で利用している教材を「サン・キッズ」でも活用するなど、シナジー創出に向けた取り組みが徐々に進んでいる。既述のとおり生徒獲得にやや苦戦しているが、将来的には「早稲田アカデミー」への導線となり、LTV向上に貢献するものと期待される。
c) 人材育成・採用の取り組み強化
持続的な成長を実現していくためには質の高い人的リソースを拡充していくことが重要課題となる。特に、ここ1~2年は大卒初任給の上昇とともに新卒採用が難しくなってきており、採用強化と併せて育成強化にも注力し、従業員エンゲージメントの向上にも取り組んでいる。
具体的な取り組みとして、採用面では各種セミナーの開催と併せてアルバイト職員への説明会や卒塾生の採用など内部リクルートの強化に取り組んでいる。育成強化については、新卒・中途社員向け研修内容の充実を図り、教務力向上施策としては1・2年目講師に対する指導研修を実施しているほか、新たな取り組みとして2025年11月に教務力No.1講師を決定する授業技術コンテストを開催し、活性化につなげている。また、人事報酬制度についても新卒初任給や基本給のベースアップに加え、従業員RS制度を導入するなど従業員のモチベーションの維持向上に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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