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ヤマノHD Research Memo(3):ニューバリューセグメントとコアバリューセグメントによる「両利きの経営」

*11:33JST ヤマノHD Research Memo(3):ニューバリューセグメントとコアバリューセグメントによる「両利きの経営」
■ヤマノホールディングス<7571>の事業概要

1. 事業概要
(1) ニューバリューセグメント
ニューバリューセグメントは、社会構造や消費行動の変化を背景に、新たな顧客価値の創出を目的として展開されている事業群である。同セグメントは、成長市場への単純な参入ではなく、「生活者のライフステージ」や「人生の節目」に着目して事業を構成している点に特徴があり、教育事業、リユース事業、フォト事業で構成されている。

教育事業では、学習塾の運営を通じて成長期の子どもや若年層との接点を構築している。具体的には、(株)マンツーマンアカデミー、東京ガイダンス(株)、(株)灯学舎が、(株)やる気スイッチグループフランチャイズ契約を締結している。同事業セグメントは、個別指導塾「スクールIE」のFC加盟店運営を主力とするメガフランチャイジーとして、複数の教室を展開し、地域密着型の学習支援を行っている。短期的な収益性よりも、家庭との長期的な関係構築を重視した事業であり、ライフステージ戦略の起点としての役割を担っている。

リユース事業では、古着の買取・販売を行っており、「ニューヨークジョーエクスチェンジ」などのブランドを通じて、循環型消費やサステナビリティ志向の高まりに対応している。若年層を中心に中古品への抵抗感が薄れるなかで、新たな顧客層との接点を創出する役割を果たしている。

フォト事業では、(株)薬師スタジオを中心に、写真スタジオ運営や衣装レンタルを手掛けている。成人式や七五三、記念撮影といったライフイベント需要を取り込み、美容や装いとの高い親和性を生かしたサービス提供を行っている。また、ペット犬用のフォトスタジオである「YAKUSHI STUDIO for DOG東京町田店」は、国内でも唯一無二の存在であり、全国から同スタジオでの撮影を希望する顧客が集まっている。

(2) コアバリューセグメント
コアバリューセグメントは、長年にわたり培ってきた理念、ブランド、顧客基盤を基礎とする中核事業群であり、事業ポートフォリオ全体の安定性を支えている。具体的には、美容事業及び和装宝飾事業、ライフプラス事業といった小売事業がこのセグメントに属する。

和装宝飾事業のうち和装小売事業では、「東京きもの愛」「きもの京都」「京のきもの屋四君子」「ら・たんす」「かのこ」「すずのき」などの呉服専門店ブランドを展開し、着物販売を中心に事業を行っている。高関与・高単価商材であるため、対面での丁寧な接客と信頼関係の構築が重視されてきた。同社では和装事業において「着方教室」「着る機会の提供」「メンテナンス」を三位一体の価値として提供している点が特徴である。販売員の多くが着付けの資格を有しており、着こなしや所作について顧客一人ひとりにきめ細やかな助言を行う。こうした人的サービスの提供が、顧客満足度の向上と、長期的な関係性の構築に寄与している。また、そうした顧客を通じた新規顧客の獲得にもつながっており、顧客創造のエコシステムが形成されている。宝飾及び寝装品事業についても、催事販売や対面販売を通じて顧客との関係性を深めるビジネスモデルを採用しており、訪問販売や展示会販売といった販売形態は、同社の企業史と強く結びついている。

美容事業では、ヘアサロン及びネイルサロンを展開しており、「YAMANO」ブランドを軸としたサロン運営を行っている。美容は定期的な来店需要が見込める分野であり、顧客との継続的な接点を確保しやすい点が強みである。人財の質が競争力を左右する業態であるが、ヤマノグループ全体が有する美容教育の知見や人財育成基盤との親和性は高く、同社ならではの競争優位性を形成している。

ライフプラス事業では、展示会販売や対面型直販を中心に、健康関連商品や生活品質の向上を志向した商材を取り扱っている。かつての訪問販売で培った説明力や関係構築力を生かし、生活者の健康意識や自己管理ニーズに対応する事業であり、同社の原点と連続性を持つ分野といえる。

2. 事業ポートフォリオ
同社の現在の事業ポートフォリオは、企業史的に見れば多角化の整理局面を経て再構築されたものであり、単なる事業の寄せ集めではなく、明確な戦略的意図を伴った構成となっている。その中核にあるのが、安定性の確保と成長機会の探索を同時に進めるという発想であり、これはまさに「両利きの経営」そのものである。

安定性の確保を担うのがコアバリューセグメントである。和装宝飾事業、美容事業、ライフプラス事業は、同社の歴史と理念に根差した中核事業であり、長年にわたり蓄積してきたブランド力、顧客基盤、対面型サービス運営のノウハウがあり、急激な需要変動が生じにくく、安定的なキャッシュ創出が見込める点に強みがある。もっとも、これらのコア事業はいずれも市場成熟度が高く、構造的な高成長を見込みにくい分野であるため、同社が無理な拡張ではなく、効率化や収益性改善を通じて事業価値を維持する戦略を採用している点は合理的である。同セグメントはニューバリューセグメントへの投資余力を生み出すキャッシュ創出とブランド価値維持を主目的とした位置付けにあると評価できる。

一方、成長機会の探索を担うのがニューバリューセグメントである。教育事業、リユース事業、フォト事業はいずれも、社会構造や消費行動の変化を背景に、中長期的な成長余地が見込まれる分野である。注目すべきは、これらの事業が単に成長市場を狙ったものではなく、「ライフステージ」や「人生の節目」という時間軸を共有している点である。教育、就職、結婚、子育て、ライフスタイルの変化といった局面において、同社の各事業が点ではなく線として顧客と関わる余地を持つ構成となっており、これは創業期から培われてきた関係性ビジネスの思想を、現代的に再解釈した結果と言える。

もっとも、ニューバリューセグメントの多くは現時点では事業規模が小さく、短期的に全社収益をけん引する段階には至っていない。その意味で、同社の事業ポートフォリオは完成形ではなく、複数の成長の芽を抱えながら選別と重点化を進めていく過渡期にあると評価するのが妥当である。

以上を踏まえると、同社の事業ポートフォリオは、一般的な多角化とは明確に異なり、コアによる安定性と新規領域による成長性を意図的に併存させる両利きの経営構造へと進化している。一方で、今後の経営戦略上の焦点は、ニューバリューセグメントの中から次のコアとなり得る事業を見極め、成長させられるかどうかにある。これは事業運営能力とともに、M&A戦略の成否にかかっている側面が強く、経営としての編集力と意思決定の質が問われる局面である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)



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