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ABEJA Research Memo(4):ミッションクリティカル業務に特化したAIテック企業(1)

*12:04JST ABEJA Research Memo(4):ミッションクリティカル業務に特化したAIテック企業(1)
■事業概要

1. 事業概要
(1) デジタルプラットフォーム事業
ABEJA<5574>の事業はデジタルプラットフォーム事業である。同社は単なるAI開発や単発ソリューション提供ではなく、自社開発の「ABEJA Platform」を基盤として、企業の基幹業務プロセスのDXを継続的かつ安定的に実行・運用することを目的としている。「ABEJA Platform」は、AIを単発導入するための開発基盤ではなく、業務の中でAIを継続的に稼働させ、改善し続けるための実行・運用基盤として設計されている。データの生成・収集・加工から分析・AIモデリング・実行・再学習・運用監視まで、AIライフサイクル全体を一気通貫で管理可能とする点が特徴である。提供形態はクラウド環境に加えオンプレミスとのハイブリッド構成にも対応している。これにより、高度なセキュリティ要件やデータガバナンスが求められるミッションクリティカル業務へのAI導入を可能としている。

同社の事業活動は、AI導入初期の構想策定・業務設計・基盤構築を担うトランスフォーメーション領域と、導入後の安定稼働・改善・高度化を担うオペレーション領域の双方を包含している。これにより、AI導入を一過性のプロジェクトに終わらせず、企業の中核業務として定着させることを可能としている。

(2) 収益構造
同社の収益構造は、トランスフォーメーション領域とオペレーション領域の二層構造をなしている。現在の収益の柱であるトランスフォーメーション領域では、AI導入に向けた構想策定、業務プロセス設計、データ設計、システム構築を担う。業務全体の最適化を前提とするため、単価は高水準となるものの、性格としてはフロー型収益に近い。一方、オペレーション領域は「ABEJA Platform」の利用料、運用支援、モデル改善、機能拡張などを通じて、継続課金型のストック収益が積み上がる構造である。ミッションクリティカル業務を対象とするため、運用は長期化しやすく、顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は自然に拡大する。この結果、構築フェーズで高単価案件を獲得し、その後の運用フェーズで安定的かつ高付加価値な収益を積み上げる、プラットフォーム型ビジネスモデルが形成されている。

(3) 業界における位置付け
同社の事業モデルは、国内のAI開発企業やDXベンダーとは本質的に異なる。比較対象として適切なのは、米国のPalantir Technologiesに代表されるAIプラットフォームベンダーである。Palantir Technologiesが国家安全保障や大企業の中核業務を対象に、データ統合と意思決定を支える業務OSを提供してきたのに対し、同社は日本企業及び日本の制度環境に適合したAI実装・運用プラットフォームを提供している。両社に共通するのは、AIモデルそのものを売るのではなく、業務全体を横断的に支える基盤を提供している点である。個別AI開発では代替困難な高いスイッチングコストが形成され、長期的な顧客関係が前提となる。特に同社は、オンプレミスとクラウドのハイブリッド対応、小型LLMの活用によるデータ主権・ガバナンス確保など、日本市場特有の要請に適合した設計を強みとしており、この点において独自のポジションを確立している。

(4) プラットフォームの構造分析
同社のデジタルプラットフォーム事業は、AIを企業活動の中で継続的に機能させるために必要となる一連のプロセスを包括的に提供する点に特徴がある。公式には、同社のプラットフォームは「データの生成・収集から、加工・分析、AIモデリング、運用・改善に至るまでのプロセスを一気通貫で支援する基盤」と位置付けられている。まず起点となるのが、業務現場や既存システムから発生する各種データの生成・収集である。センサー、画像、ログ、業務データなど多様な形式のデータを取り込み、AI活用の前提となるデータ基盤を構築する。次に、収集されたデータは加工・整理され、分析や学習に適した形へと変換される。この工程では、データクレンジングや前処理が行われ、業務で利用可能な品質水準を担保することが重視されている。そのうえで、同社のプラットフォーム上においてAIモデリングが実施される。機械学習や深層学習を含む各種手法を用いてモデルを構築し、業務課題に応じた最適なアルゴリズムを設計することが可能となっている。構築されたAIモデルは、実際の業務環境に実装され、推論・実行フェーズへ移行する。単なる実証実験にとどまらず、本番業務における継続利用を前提としている点が、同社プラットフォームの大きな特徴である。さらに同社は、AIを導入して終わりとするのではなく、運用・改善のフェーズを重視している。実運用の中で蓄積されるデータを活用し、モデルの再学習や精度改善を行うことで、AIが業務環境の変化に適応し続ける仕組みを構築している。

このように同社のプラットフォームは、データ生成・収集 → 加工・分析 → AIモデリング → 実行・運用 → 継続的改善というプロセス全体を一体的に支援する構造を有している。同社が強調するのは、AI導入を単発の開発プロジェクトとして扱うのではなく、業務プロセスの中に組み込み、長期にわたり価値を生み続ける「実装と運用の基盤」として提供する点である。この一連のプロセスを包括することにより、企業はAI活用を部分最適に終わらせることなく、全社的・継続的なDXへと発展させることが可能となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)



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