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アピリッツ Research Memo(7):新領域の価値創出とDiscovery型への転換により、持続的な成長を目指す
2026/07/31 09:37
*09:37JST アピリッツ Research Memo(7):新領域の価値創出とDiscovery型への転換により、持続的な成長を目指す
■中長期の成長戦略
アピリッツ<4174>は2030年1月期までの中長期的な成長戦略を「VISION2030」として2024年3月に開示している。同計画における2030年1月期の定量目標は、売上高が既存事業の拡大及びM&Aによる外部成長により2025年1月期比2倍超の20,000百万円(同期間の売上高CAGR(年平均成長率)は17.3%)、営業利益は2,000百万円、営業利益率は10.0%、連結社員数は1,700人(2027年1月期第1四半期末の実績は881人)、退職率は8%台(2026年1月期の実績は16%)としていたが、同社は生成AIの普及など事業環境の変化を踏まえ、2027年1月期中にこれらの目標値を含む計画内容を見直す予定としている。継続的な成長を実現するための中小規模M&Aをプログラマティックに実施する方針に変更はない。
同社は労働集約型のビジネスモデルを採用してきたため、従来は「1人当たり売上高(単価)×社員数(数量)」を成長構造としていたため、社員数をKPIとして、新卒及び中途採用数の増加、離職率の低減、M&Aによる人員拡大などを推進してきた。一方で、生成AIの普及によりシステム開発やテストの効率化が進むなか、人員の投入量を売上高に転換する従来の人月型モデルだけでは、持続的な成長が困難になる懸念がある。このため、要件に沿って開発・納品する従来の「Delivery」型から、顧客とともに事業機会を見つけ、新たな価値を生み出す「Discovery」型の機能を追加することで、既存の開発基盤と新領域の価値創出により、真の「インターネットカンパニー」への進化を図る。
「Discovery」型では、同社が能動的に顧客の事業課題や成長機会を探索し、発注者と受注者という関係から、リスクとリターンを共有する事業パートナーへの移行を目指す。価値の源泉も開発力や納品スピードから、ビジネスアーキテクト、サービスデザイン、人間中心設計などの上流機能へ広げていく。収益面では、受託開発によるフロー型収益に加え、事業成果に連動するストック型やレベニューシェア型の収益機会を増やし、高付加価値化及び収益性の向上を図る。また、ターゲットとする顧客層についても、IT投資を行う一般企業に加え、音楽・推し活・スポーツをはじめとするエンタメ文化へ拡大する方針を掲げている。
人材戦略も、人数の拡大だけでなく、質と生産性を重視する方向へ変化している。要件定義、設計、システム全体の構成を担えるミドル・シニア層を増やすとともに、少数精鋭のフルスタックエンジニアと生成AIを組み合わせた開発体制の構築を進める。若手人材については、教育体系の再構築や社内コミュニティの形成によって継続的な能力向上を支援する。従業員のエンゲージメント向上にも注力しており、労働環境の整備や給与水準の引き上げなどを継続的に実施している。また、「学園化」と称した独自の企業文化の醸成にも取り組んでいる。やりがいや学びの機会の提供、成長を支える制度、助け合いの文化の育成、リモートワークの推進など、多様な価値観や働き方に対応できる環境づくりに注力している。
「Discovery」型の事業創出を実践する場として、企業、人材、アイデアが循環する価値創造エコシステム「SAKURA STAGE BASE」の構築も進めている。社内の学習機会である「WBCカレッジ」を社外の専門家や企業にも広げ、技術や事業アイデアを共有する。そこで生まれた構想に対して出資や共同開発を行い、サービスデザインや高度なSI能力を持つ専門人材が事業化を担うことで、受託案件を待つ事業運営から、自ら事業機会を生み出す体制への移行を構想している。
新領域の開拓では、2026年6月8日に東京大学発スタートアップのH2Lと資本業務提携を締結し、フィジカルAI領域へ参入した。同社のWeb・アプリ開発力やサービスデザイン力と、H2Lが持つ身体感覚や動作をデジタル化する技術を組み合わせたフィジカルAIソリューションの企画、開発、社会実装を目的としており、スポーツ指導AI、技能承継AI、ファン参加型体験、施設向けAI測定メニューなどを検討している。フィジカルAIは投資及び共同開発の初期段階にあるため、今後は実証案件の獲得、商用化までの進捗、継続収益を得られる事業モデルの構築が焦点となる。
持続的な成長に向けてはM&Aも積極的に活用する。事業戦略に適合する対象企業を事前に選定し、一定の基準に基づいて買収を繰り返すことにより、事業規模の拡大や競争力の向上を図る。デジタル人材の需給がひっ迫し、採用競争が激化するなか、M&Aにより優秀な人材や新たな技術、顧客基盤を獲得し、既存事業との相乗効果を高める考えである。今後は完全子会社化による人材や事業基盤の獲得に加え、H2Lへの出資のような少数出資や資本業務提携も活用し、新しい技術領域への参入と「Discovery」型の事業創出を推進する。外部成長策が人員拡大を主目的としたM&Aから、新規事業の共同開発を含む形へ広がっている点は、従来の成長戦略からの主な変化である。
■株主還元策
2026年1月期は収益悪化も安定配当を維持、2027年1月期は増配を計画
同社は株主還元策として、配当を実施している。2025年1月期までは自己株式の取得を含めた「総還元性向30%」を目安として株主還元を行っていたが、株主還元のさらなる充実を目的として、2026年1月期より利益還元の目安を「総還元性向30%」から「配当性向30%」へと変更している。
2026年1月期は親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、配当性向30%を基準とすれば減配の対象となる水準となったが、「安定的かつ継続的な還元」を重視し、期初予想どおり1株当たり年間28.0円の配当を実施した。2027年1月期の1株当たり年間配当は前期比1.0円増の29.0円(中間配当14.5円、期末配当14.5円)を計画している。実現すれば2022年1月期の配当開始から5期連続の増配となる。通期業績計画から算出される配当性向は102.5%で、2026年7月9日の終値689円を基準とした配当利回りは4.2%と高水準となっている。
同社は足元の収益悪化を一時的なものとして、構造改革や人的リソースの再配置による収益性の改善を見込んでいる。この利益回復への手応えと安定的な利益還元を重視する方針から、配当性向の目安を上回る状況でも増配を計画している。配当負担が利益水準を上回る点には留意が必要であるものの、財務の健全性と成長投資を両立しながら利益還元を継続する方針は、株主価値の向上を意識した還元姿勢を示している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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■中長期の成長戦略
アピリッツ<4174>は2030年1月期までの中長期的な成長戦略を「VISION2030」として2024年3月に開示している。同計画における2030年1月期の定量目標は、売上高が既存事業の拡大及びM&Aによる外部成長により2025年1月期比2倍超の20,000百万円(同期間の売上高CAGR(年平均成長率)は17.3%)、営業利益は2,000百万円、営業利益率は10.0%、連結社員数は1,700人(2027年1月期第1四半期末の実績は881人)、退職率は8%台(2026年1月期の実績は16%)としていたが、同社は生成AIの普及など事業環境の変化を踏まえ、2027年1月期中にこれらの目標値を含む計画内容を見直す予定としている。継続的な成長を実現するための中小規模M&Aをプログラマティックに実施する方針に変更はない。
同社は労働集約型のビジネスモデルを採用してきたため、従来は「1人当たり売上高(単価)×社員数(数量)」を成長構造としていたため、社員数をKPIとして、新卒及び中途採用数の増加、離職率の低減、M&Aによる人員拡大などを推進してきた。一方で、生成AIの普及によりシステム開発やテストの効率化が進むなか、人員の投入量を売上高に転換する従来の人月型モデルだけでは、持続的な成長が困難になる懸念がある。このため、要件に沿って開発・納品する従来の「Delivery」型から、顧客とともに事業機会を見つけ、新たな価値を生み出す「Discovery」型の機能を追加することで、既存の開発基盤と新領域の価値創出により、真の「インターネットカンパニー」への進化を図る。
「Discovery」型では、同社が能動的に顧客の事業課題や成長機会を探索し、発注者と受注者という関係から、リスクとリターンを共有する事業パートナーへの移行を目指す。価値の源泉も開発力や納品スピードから、ビジネスアーキテクト、サービスデザイン、人間中心設計などの上流機能へ広げていく。収益面では、受託開発によるフロー型収益に加え、事業成果に連動するストック型やレベニューシェア型の収益機会を増やし、高付加価値化及び収益性の向上を図る。また、ターゲットとする顧客層についても、IT投資を行う一般企業に加え、音楽・推し活・スポーツをはじめとするエンタメ文化へ拡大する方針を掲げている。
人材戦略も、人数の拡大だけでなく、質と生産性を重視する方向へ変化している。要件定義、設計、システム全体の構成を担えるミドル・シニア層を増やすとともに、少数精鋭のフルスタックエンジニアと生成AIを組み合わせた開発体制の構築を進める。若手人材については、教育体系の再構築や社内コミュニティの形成によって継続的な能力向上を支援する。従業員のエンゲージメント向上にも注力しており、労働環境の整備や給与水準の引き上げなどを継続的に実施している。また、「学園化」と称した独自の企業文化の醸成にも取り組んでいる。やりがいや学びの機会の提供、成長を支える制度、助け合いの文化の育成、リモートワークの推進など、多様な価値観や働き方に対応できる環境づくりに注力している。
「Discovery」型の事業創出を実践する場として、企業、人材、アイデアが循環する価値創造エコシステム「SAKURA STAGE BASE」の構築も進めている。社内の学習機会である「WBCカレッジ」を社外の専門家や企業にも広げ、技術や事業アイデアを共有する。そこで生まれた構想に対して出資や共同開発を行い、サービスデザインや高度なSI能力を持つ専門人材が事業化を担うことで、受託案件を待つ事業運営から、自ら事業機会を生み出す体制への移行を構想している。
新領域の開拓では、2026年6月8日に東京大学発スタートアップのH2Lと資本業務提携を締結し、フィジカルAI領域へ参入した。同社のWeb・アプリ開発力やサービスデザイン力と、H2Lが持つ身体感覚や動作をデジタル化する技術を組み合わせたフィジカルAIソリューションの企画、開発、社会実装を目的としており、スポーツ指導AI、技能承継AI、ファン参加型体験、施設向けAI測定メニューなどを検討している。フィジカルAIは投資及び共同開発の初期段階にあるため、今後は実証案件の獲得、商用化までの進捗、継続収益を得られる事業モデルの構築が焦点となる。
持続的な成長に向けてはM&Aも積極的に活用する。事業戦略に適合する対象企業を事前に選定し、一定の基準に基づいて買収を繰り返すことにより、事業規模の拡大や競争力の向上を図る。デジタル人材の需給がひっ迫し、採用競争が激化するなか、M&Aにより優秀な人材や新たな技術、顧客基盤を獲得し、既存事業との相乗効果を高める考えである。今後は完全子会社化による人材や事業基盤の獲得に加え、H2Lへの出資のような少数出資や資本業務提携も活用し、新しい技術領域への参入と「Discovery」型の事業創出を推進する。外部成長策が人員拡大を主目的としたM&Aから、新規事業の共同開発を含む形へ広がっている点は、従来の成長戦略からの主な変化である。
■株主還元策
2026年1月期は収益悪化も安定配当を維持、2027年1月期は増配を計画
同社は株主還元策として、配当を実施している。2025年1月期までは自己株式の取得を含めた「総還元性向30%」を目安として株主還元を行っていたが、株主還元のさらなる充実を目的として、2026年1月期より利益還元の目安を「総還元性向30%」から「配当性向30%」へと変更している。
2026年1月期は親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、配当性向30%を基準とすれば減配の対象となる水準となったが、「安定的かつ継続的な還元」を重視し、期初予想どおり1株当たり年間28.0円の配当を実施した。2027年1月期の1株当たり年間配当は前期比1.0円増の29.0円(中間配当14.5円、期末配当14.5円)を計画している。実現すれば2022年1月期の配当開始から5期連続の増配となる。通期業績計画から算出される配当性向は102.5%で、2026年7月9日の終値689円を基準とした配当利回りは4.2%と高水準となっている。
同社は足元の収益悪化を一時的なものとして、構造改革や人的リソースの再配置による収益性の改善を見込んでいる。この利益回復への手応えと安定的な利益還元を重視する方針から、配当性向の目安を上回る状況でも増配を計画している。配当負担が利益水準を上回る点には留意が必要であるものの、財務の健全性と成長投資を両立しながら利益還元を継続する方針は、株主価値の向上を意識した還元姿勢を示している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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