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トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(2)【中国問題グローバル研究所】
2025/11/28 16:45

*16:45JST トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」 高市政権は未だバイデン政権の対中戦略の中(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。


◆中国に歩み寄るトランプ政権:米中蜜月状態
中国は韓国での米中首脳会談以降、レアアースに関しても不十分ながら米国に対して緩和策を実施し始めており(※2)、中国全体の10月のレアアース磁石の輸出は2ヵ月連続で減少しているが、米国の出荷だけは急増している(※3)。

そこで11月26日、米通商代表部は「2025年11月29日に関税猶予期限切れ予定だった178件の中国製品に関して、有効期限を2026年11月10日まで延長することを決定した」(※4)と発表している。

また同じ11月26日、米国商務長官ラトニックが「トランプがNVIDIAの最先端AIチップH200を中国に販売することを認めるか否かを、いま正に検討中だ」(※5)と表明している。2年前に発売されたH200は、前世代のH100よりも大きな高帯域幅ストレージを備え、高速なデータ処理を実現している。中国にとっては喉から手が出るほど欲しい最先端AIチップだ。NVIDIAにとって中国は世界一の巨大市場だが、一部の米議会議員は反対している。しかし、ラトニックは「全ての情報と方向性に関する決断はトランプ大統領が掌握している」と述べている。

トランプはこの決断をするか否かの最終的な瞬間の中にいる。それを高市総理の「台湾有事に関する国会答弁」で邪魔されたくないと考えているだろう。それは研ぎ澄まさなければならない判断と決断にとって「雑音」となる。

さらに驚くべきは11月22日に新華網が<11月18日から22日にかけて中国軍と米軍は海上軍事安全協議メカニズムの第二回作業部会年度会議をハワイで開催した>(※6)と報道したことだ。

加えて11月25日、米メディアのCNBCはベッセント米財務長官が11月24日の米中首脳電話会談のあと取材に対して「来年は4月のトランプ訪中、その後は習近平の訪米、さらに11月深センでのAPECサミットおよび12月米ドラールでのG20があるので、習近平とトランプは来年4回も会うかもしれない」(※7)と発言し、米中の蜜月をアピールしている。

このように米中は今、かつてないほどの「蜜月状況」にあることを見落としてはならない。そこにはトランプの命運がかかっている。


◆高市政権は未だバイデン政権の対中戦略観の中にいる
こういった現状に立っ日米中を眺めてみると、わが国で起きている「存立危機事態」論議自体が、トランプにとっては「存立危機状況」に相当するにちがいない。トランプはきっと、「親愛なる高市総理よ、あなたと私の友情は変わらないが、しかし頼むから習近平の神経を逆なでするような言動をしないでほしい」と切に願っていることだろう。「日中関係の悪化が、その兄弟姉妹国である私のビジネスを巻き込まないでほしい」という声が聞こえるようだ。

そもそも今年8月15日、トランプは習近平が自分に対して「あなたが大統領である限り、台湾に対する武力侵攻はしない」と言ったと主張しているとCNNが報道している(※8)。

10月20日にはトランプは、オーストラリア首相との会談後の記者会見で「中国は台湾侵攻を望んでいない」(※9)と発言している。

高市発言後の11月20日のFox Newsの取材で、司会者がトランプに対して、高市発言に関する薛剣の発言をどう思うかと質問したが、トランプは「多くの同盟国もわれわれの友達ではない」(※10)と躱(かわ)し、直接の回答を避けた。

つまり、高市総理が台湾有事に関して「存立危機事態」になり得る場合もあると発言したその前提として述べた「たとえば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。こういった事態も想定される」という事態は、「現在のトランプ政権では基本的に起きない」ということだ。

トランプ政権の現状においては「米軍の来援」ということは基本的に存在しない。

バイデン政権の場合は、2014年6月11日の論考<台湾有事に関するバイデン&トランプの発言と中国大陸&台湾の反応>(※11)に書いたように、バイデンは台湾有事に関して5回も「米軍が出動する可能性がある」と発言している。

つまり高市発言は、あくまでもバイデン政権における対中包囲網形成を前提とした発想である。

おまけに台湾独立を必死になって煽ってきたのは第二のCIAと呼ばれているNED(全米民主主義基金)であることは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述したし、一部は論考でも書いてきた。それを主導してきたのはバイデン前大統領系列だ。

ところがトランプは、そのNEDの活動を潰してしまっているのである(詳細は今年2月21日の論考<習近平驚喜か? トランプ&マスクによるUSAID解体は中国の大敵NED瓦解に等しい>)(※12)。

高市政権はこの現実を認識しきれていない。未だバイデン政権時代のアメリカの思考回路の中に取り残されたママであることを危惧する。

習近平はそこを狙い、徹底して高市政権を叩くことに余念がない。

事実、11月23日の論考<中国の「高市非難風刺画」は「吉田茂・岸信介」非難風刺画と同じ――そこから見える中国の本気度>(※13)にある風刺画をよくご覧になっていただきたい。吉田茂や岸信介の風刺画の背後にはいつも米国がいるが、高市総理の風刺画には「米国の影は皆無」である。

いま日中米の間で起きている事態の全てが、この風刺画に象徴されている。

かかる事態が起きることを避けるために筆者は、たとえば10月23日の論考<高市総理に「日米首脳会談」までに認識してほしい、トランプ大統領の対中姿勢(対習近平愛?)>(※14)などを書いて、高市政権および日本国民を守るために必死になって警告を発し続けてきた。しかし残念ながら、その声は政権運営には反映されなかったようだ。

高市政権がバイデン政権時代の思考回路から脱却し、国際社会の現実を認識して、トランプ政権の現状に即応した政権運営をしてくれることを期待したい。


この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※15)より転載しました。


韓国における米中首脳会談後のトランプ大統領と習近平国家主席(習近平の耳元で「習近平愛」を囁くトランプ)(写真:ロイター/アフロ)

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/china-starts-work-easing-rare-earth-export-rules-short-trump-hopes-sources-say-2025-11-07/
(※3)https://www.reuters.com/world/asia-pacific/china-october-rare-earth-magnet-exports-fall-second-month-us-shipments-surge-2025-11-20/
(※4)https://www.voachinese.com/a/ustr-extends-exclusions-from-china-section-301-tariffs-related-to-forced-technology-transfer-investigation-20251126/8087410.html
(※5)https://www.voachinese.com/a/trump-weighs-allowing-nvidia-to-sell-advanced-ai-chips-to-china-20251125/8086060.html
(※6)http://www.news.cn/world/20251122/01000030a9cb4e5685ee8de582397114/c.html
(※7)https://www.cnbc.com/2025/11/25/cnbc-transcript-us-treasury-secretary-scott-bessent-speaks-with-cnbcs-squawk-box-today.html
(※8)https://edition.cnn.com/2025/08/16/asia/trump-xi-taiwan-invasion-intl-hnk
(※9)https://rollcall.com/factbase/trump/transcript/donald-trump-remarks-bilat-anthony-albanese-australia-october-20-2025/
(※10)https://rollcall.com/factbase/trump/transcript/donald-trump-interview-laura-ingraham-fox-news-november-20-2025/
(※11)https://grici.or.jp/5327
(※12)https://grici.or.jp/6005
(※13)https://grici.or.jp/6952
(※14)https://grici.or.jp/6786
(※15)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e599ad4676311db2551e02c7037588a76ec28568



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